本稿は,生命保険における保険金受取人変更の意思表示を要式行為とする立法の可能性について考察を試みるものである。その前提となる現況として,保険金受取人変更の効力要件について規定する保険法43条2項の立法の経緯や,比較法的状況に言及しつつ,本稿では,基本法である民法の理論を検討することを研究の主眼とする。すなわち,民法に規定される諸行為の中から,一定の方式が要求されるものとして,「遺言」と「第三者
対抗要件
」の規定を取り上げ,その方式の意義について考察する。そして,「表意者死亡後に権利の確定する単独行為」という遺言との共通性や,「紛争解決機能への配慮の必要性」という指名債権譲渡の第三者
対抗要件
規定との共通性から,保険法43条2項における保険金受取人変更が,何らかの要式行為とされるべきではないか,との立法論の可能性を示す。
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