骨格筋の機能と筋線維構成の関係を明らかにする研究の一環として, 後頭下筋につき, その横断面積, 断面の筋線維総数, 1mm
2中の筋線維数, 筋線維の太さ, 密度等を算出し, 他と比較した.材料は学生実習用の10%ホルマリン水注入屍11体 (男性6, 女性5, 平均年齢73.2歳) から得られた大後頭直筋,
小後頭直筋
, 上頭斜筋, 下頭斜筋の4筋でセロイジン包埋, HE染色標本によった.結果は次のごとくである.1) 筋腹横断面積および断面の筋線維総数は男女とも下頭斜筋, 大後頭直筋, 上頭斜筋,
小後頭直筋
の順に大で多かった.男女別には断面積では男性の方が女性よりも優る傾向が見られたが, 線維数では一般に性差はなく下頭斜筋のみに男性優位の傾向が見られたに過ぎなかった.2) 1mm
2中の筋線維数は, 男女平均で下頭斜筋が最も多く, 上頭斜筋がこれに次ぎ, 以下, 大,
小後頭直筋
はほぼ等しく, 頭斜筋が後頭直筋よりも多い傾向がみられた.他筋に比べて, 4筋とも外腹斜筋, 腹横筋等よりも少なく, 中間的な筋群に属した.3) 筋線維の太さは,
小後頭直筋
が最も大, 大後頭直筋がこれに次ぎ, 上, 下頭斜筋が相等しくて最も小で頭の固定に働く筋が頭の回旋に働く筋よりも大であった.他と比較すると, 4筋とも僧帽筋中間部よりも遥かに小, 大腰筋よりも大であり, 一般に骨問の一定位の保持に働く筋に最も近かった.4) 筋線維の密度は, 下頭斜筋と
小後頭直筋
, 上頭斜筋と大後頭直筋がそれぞれ相等しく, 前者が後者よりも優っていたが, 女性では4筋とも相等しくて差がなく, 上頭斜筋と大後頭直筋では女性の方が男性よりも密度が高かった.4筋とも外腹斜筋, 内腹斜筋, 腹横筋, 腸骨筋よりも低く, 身体支持筋の特徴を示していた.5) 組織所見では, 筋線維の大小不同は
小後頭直筋
に, 萎縮は上頭斜筋と下頭斜筋にそれぞれ多く, 結合組織性の筋周膜増加は大後頭直筋と下頭斜筋で男性に多い傾向がみられた.6) 筋線維の太さの分布型から見て, 大後頭直筋と
小後頭直筋
は頂点の低い分布型が多く, 上頭斜筋と下頭斜筋は逆に高い分布型が多く, 後者の方が萎縮傾向が強く小型に均一化していると考えられた.
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