慢性腎不全透析(HD)患者のHelicobacter pylori(HP)の感染の有無(抗HP抗体,胃粘膜ウレアーゼ)を背景胃粘膜の面から非HD患者と比較検討した.HD患者は30例(平均罹病期間11.2年の51-83歳までの患者:平均年齢61.5歳)で,抗HP抗体陽性例は11例,その背景胃粘膜は木村・竹本分類のC
2,3,O
1,2であった.陰性例は19例で,その背景胃粘膜はC
2,3,O
1,2であった.陰性例の19例中15例がC
1症例で,HD期間と胃粘膜萎縮の関係ではC
1例は全てHD6年以上の症例であった.O
3例はHD導入11カ月以下の症例で,C
2,3,O
1,2例は2年以下の症例であった.非HD患者は29例(平均罹病期間9.7年の50-79歳までの患者:平均年齢60.6歳)で,抗HP抗体陽性例は21例で,その背景胃粘膜はC
2,3,O
1,2であった.抗HP抗体陰性例は8例あり,その背景胃粘膜はC
1,O
3で,そのうち6例がO
3症例であった.また,各年齢層別のHP感染と胃粘膜萎縮の変化についても,HD群では70歳以上の高齢者でも抗HP陰性のC
1例を7例認めたのに対し,非HD群でのC
1例は50歳台の2例のみであった.HD患者は非HD患者に比べ,年齢に比して胃粘膜萎縮の進展が抑制される傾向を示し,この変化はHD期間に相関する傾向が認められた.HD,非HD例ともに抗HP抗体と胃粘膜ウレアーゼの検出はほぼ一致した結果を示し,HPの検出は,萎縮の進行し始めたC
2,3,O
1,2という胃粘膜に認められた.腎不全患者においても胃粘膜萎縮の進展にHPが関与していると考えられ,腎不全HD患者のHPの陽陰性の要因として,HDによる胃粘膜の変化と加齢による胃粘膜萎縮性変化の進展が考えられた.
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