本研究の目的は、柔道授業における学習内容の順序が学習成果に与える影響を検討することであった。調査は、柔道初心者の中学1年生2クラス61名(男子:36名、女子25名)において、2015年の秋季に授業担当教諭(教育歴20年以上、専門的な柔道経験なし)と本研究者(柔道4段)が共同で実施した8時間の単元後に、生徒の心理社会的学習成果(護身・協同学習・礼儀作法・学習規範の遵守)を評価する20項目を用いて実施された。また、調査対象の2クラスのうち、1クラスは単元序盤に「投げ技」、終盤に「固め技」を実施し(投げ技開始群)、もう一方は反対に「固め技」、「投げ技」の順序で実施し(固め技開始群)、単元後の学習成果をt検定によって検討した。その結果、学習成果の全てで「固め技開始群」の得点が「投げ技開始群」よりも高く、特に「護身」と「学習規範の遵守」においては有意差が認められた(護身:t(59)=2.91、p<.01、学習規範:t(59)=3.48、p<.001)。学習成果の護身は相手の様々な動きや技に対応する、学習規範の遵守は授業中のルール等の遵守をそれぞれ表しており、これらの学習成果は単元序盤に「固め技」を学習した生徒の方に得られていることが示された。
抄録全体を表示