シラホシゾウ属3種雌成虫の餌木への集まり方と,マークをっけて放逐した個体が再捕獲される経過とを,約200m離れた環境の異なる2つの試験地にクロマツ餌木を設置して比較検討した。
試験地-1は約40年生のアカマツ,アイグロマツ林で,自然の枯死木がみられ,シラホシゾウ属3種が世代を繰り返している。試験地-2は約15年生のテーダマツ林で,自然の枯死木は認められない。餌木は根元から140cmまでの部分と, 140~280cmの部分とに分け,それぞれ10本ずつをさらに2等分して,一面に並べた。根元より140cmまでをAグループ, 140~280cmをBグループとして, A, B間に10mの間隔をとった。
1. シラホシゾウ属3種の捕獲数,捕獲の経過などA, Bグループ間に差は認められない。
2. 試験地-1と2で3種の捕獲数を比較したところ,第2地点ではニセマツノシラホシゾウムシの割合が大きかったが,その他の2種の捕獲数,捕獲の時期などには2地点間で差は認められなかった。
3. 捕獲成虫の餌木上での分布様式は,捕獲数が少ないと3種ともに一様分布であり,捕獲数が多くなると,ニセマツノシラホシゾウムシ,コマツノシラホシゾウムシは小さな集団をもっ集中分布,さらに捕獲数が増すと,逆に機会的分布になった。分布様式は地点間で差は認められなかった。
4. 実験初期に放逐した個体は,おそく放逐した個体よりも,放逐日の次の調査日の再捕獲率が高いが,時間とともに再捕獲率は低下した。放逐数の少ないマツノシラホシゾウムシを除いて, 2種, 2地点間で再捕獲率とその時間的な推移のちがいは認められなかった。
5. 放逐後,再捕獲されない時間を隔てて後に再捕獲される個体があるが,その時間の長さなどに3種, 2地点間の差は認められなかった。
6. シラホシゾウ属3種の餌本グループ間,地点間の移動はきわめて少ない。 2地点間の移動は放逐数の5%以下である。移動の方向や移動の時期などに著しい特徴はない。
7. 放逐個体の放逐餌木グループ上での生存曲線を描いたところ, 3種間で明らかなちがいは認められなかった。
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