以上述べたる所並に余等の調査地に於て特に觀察せる所を更に此處に摘録すれば次の様である。
1. 被害の分布状況
今囘の如く稀有の暴風に際しては,特に風裏となれる部分以外は,總ての森林に於て被害を發生す。然しながら主として風を受け入れる如き状態にある谷に於て被害多く,又風向に對し50°位の範圍に偏する谷に於ても同様被害は發生す。被害發生の範圍は激甚區域は谷よりの幅員は約100m位なり。その長さは谷に沿ひ鞍部に迄續き,此處に於て被害は終る。
2. 風上障碍物の保護作用に關しては今後尚研究すべきものなるも,或る程度迄は有効なるものの様である。
3. 被害種類は地形により異り,谷底及凹曲傾斜地にては挫折木・急斜地・凸曲傾斜地には轉倒木多いのであるが,風向と地形の關係により一定しない。
4. 樹種別にはスギ最も被害多く,ヒノキ・アカマツの順となる。被害種類は樹種により異る。
5. 樹高別には轉倒木最も樹高高く挫折木・傾斜木・無害木の順となる。
6. 樹冠率別には挫折木・傾斜木・無害木・轉倒木の順に樹冠率は低下する。轉倒木の樹冠率の小なるは,中腹急傾斜地の密なる林分に於て轉倒木多きによるものなりと思はる。
7. 樹幹の完満度については,一般に完満度大なるものは轉倒せずに,挫折し,梢殺となるにつれて轉倒木と同一の傾向なるが如し。
8. 樹冠率,樹高と被害の關係はスギは樹冠率大となると共に樹高も増し,挫折木も同様である。ヒノキに於ては轉倒木は樹高高きものは樹冠率小であり,挫折木は反對なり。アカマツの關係は不明なる様である。
9. 樹高と完満度と被害の關係は,スギには轉倒木は樹高高き程完満度低下し,挫折木は反對である。傾斜木・無害木は轉倒木と同一傾向である。ヒノキに於ても同様である。アカマツに於ては尚不明なれば今後の研究にまつこととす。
10. 根の關係については,直根の發達良好なるもの,又は直根に代るべき錨根の發達良好なるものは挫折し,根の發達不良なるものは轉倒す。但し傾斜方向と風向との關係により著しき相違あるものの様である。
尚本調査は造林地に限り施行せるものにして,資料も少き感ある爲一般的の統計的數値として,價値少きものならんも,實行せる範圍内に於て取纏めたるものを報告したるものである。
最後に本調査に當り色々御援助を賜りし大阪營林局造林課長はじめ同課員の諸氏並に實行に際し御援助を賜りし京都營林署長並に同署員に謝意を表する次第である。
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