サイトカイニンの植物成長に対する生理活性と温度条件の関係を明らかにするために, いくつかの実験をおこなった.サイトカイニンとしてはN-6.ベンジルアミノプリン (BA) , 実験植物はリソウダイコン (
Raphanus sativus var.
acanthiformis cv. Risodaikon) を用いた.はじめに幼植物の個体成長に対するBA処理効果を生育温度をちがえて実験をおこない, 次に発芽後の植物体から子葉だけを切りとって検液にうかべ, 培養して子葉の重量増加によって温度条件とBAの効果の関係を調べた.その結果, BA処理による増加が無処理より非常に強く現われるのはほぼ20~27℃の間であることが多く, 30℃またはそれ以上の高温ではBA活性の著しい低下が認められた.しかしBA処理の好適温度の範囲は, 子葉培養の実験では一定でなく, とくに培養前の温度条件によって強く影響をうけることがわかった.また培養前の温度条件と培養温度との間にはやや法則性が認められ, 培養前が低温 (5~16℃) の場合には培養温度は比較的高温 (27~30℃) でもBA活性は強く現われること, また培養前が高温の場合には比較的低温の揚合のみBA活性が強いことがわかった.いっぽう, 子葉培養実験でのBA濃度は, 高濃度 (100mg/
l) でとくに高温培養のときの生理活性の低下が著しかった.そしてBAの促進効果は低温 (5~16℃) でも低かった.また子葉の培養のさいの明条件 (赤色光0.07cal/cm
2/hr) は, 低温培養のさいにBAの効果を大きくした.
個体成長に対するBAの処理効果と子葉培養に対する効果とが必ずしも一致せず, 全体に子葉培養実験の方がBAの効果が大きく, 好適温度範囲も大きかった.
終りにあたって, この研究のためにサイトカイニンの提供をいただいた味の素株式会社, グロースキャビネットの使用の便をはかってくださった東京農工大学養蚕学科に心から感謝の意を表します.また, 本研究に対して助言と批判をいただいた本学農学部田崎研究室の皆様と東京大学教養学部倉石晉博士にお礼を申し上げます.
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