丸亀平野の二毛作水田地帯において,湧水中のNO_3-N濃度などの水質変動を調査し,施用窒素のNO_3-Nとしての排出収支を検討した.その結果は,以下に要約される.1)主として冬作の施肥により土壌水中に蓄積したNO_3-Nが,潅漑水により浅層地下水へと押し出されていることが推定された.2)イネータマネギ/ニンニク二毛作水田からの推定窒素排出量は64.4kgha^<-1>であり,そのうちのほぼすべてが稲作潅漑期に排出すると推定された.3)イネーハダカムギ二毛作水田からの窒素排出量は既存文献を参考にすると12.6kgha^<-1>程度と概算され,丸亀平野二毛作水田収支検討域の平均窒素排出量は34.9kgha^<-1>であり,平均窒素負荷全量の10.3%に相当すると見積もられた.4)湧水の年平均NO_3-N,SO_4-S,Cl^-濃度は,扇状地中央から下流にかけて分布する湧水群では扇頂からの距離とともに増加し,中でもCl^-の増加割合が最も大きく,丸亀平野全体でみれば,浅層地下水の繰り返し潅漑利用や土壌や水路通過中に窒素の浄化が生じていることが推察された.
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