本研究は,まず,アメリカの
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が地域に提供する住情報サービスについて,コーネル大学・アイオワ
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で事例調査を行ない,普及のための組織と活動実態を把握する。同時に,資料収集を行ない,各
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のCooperative Extension Service(以下CESと略す)から提供される情報内容を分類・整理し,住情報に関する基礎資料を作成することを目的としている。結果は以下のとおりである。1)CESは,農務省・
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・地方自治体単位の郡事務所の連携で運営される教育ネットワークである。農務省は基本プログラムを提示する。
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の教育は,地域の実情に基づいた研究を推進し,それを教育プログラムに反映する。同時に,各郡の職員に専門教育を指導する。CESは多くのボランティアを活用し,公的・私的組織と協力して教育効果を上げている。2)CESの教育プログラムの内容は,住民の二ーズに応じて柔軟に対応できるシステムがとられているのが特徴である。3)ハウジング分野では,よりよく住まうための機会の拡大,省エネルギー,室内空気質,住宅改善,アフォーダブル・ハウジング,健康的な住宅などさまざまな角度からの取り組みがなされている。4)全米の各
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CESが発行している42,896の生活情報を分類,基礎資料を作成した。農業と食物・栄養分野および青少年やボランティア育成に力点がおかれているが,環境問題の情報が増えつつある。全体に,情報が実際的で,住民の日常生活に役立つ内容である。5)刊行物による住情報は,住宅管理と住宅計画分野が多い。メンテナンスやインテリアデザインなど,Do It Yourself(DIY)のための情報が多い。耐久・耐候性能の情報も多い。最近では衛星通信の発達によるメディアの変化が,教育方法や情報の伝え方に影響を及ぼしている。6)CESシステムの活動は75年間以上継続し,住民に生活情報を提供してきた。その間CESが果たしてきた役割は大きい。
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