工業立地の変化に伴い, 就業構造がどのように変化するのかを, 四日市市を事例として, アンケート調査結果から明らかにした. 調査は1968年に実施した範囲と同一の範囲で1990年に再び実施し, 両年間の比較により就業構造の変化をみた. 四日市市では, 1960年前後から石油化学
工業化
が進み, 管理職や専門職は他地域からの転勤, 現業職も多くは他地域から新規学卒者が吸引された. 地元からも新規学卒者が採用されたが, 他産業就業者からの中途採用はほとんどなく, そのため, 従来の地域住民の就業構造変化は小さかった. 農家も基幹労働力の多くはそのまま農業に就業し, 若年層が脱農化していった. 地域内には旧来の住民と新来の住民とが混在した社会が形成された. しかし, その後石油化学工業は成熟化し, 流入者は相対的に減少, かつての新来の住民もそのまま定着した. 1960〜70年代に工業に就業した農家の若年層は世帯主層となり, 農業には就業せず, 農業就業者は世帯主の親の層に限定されて, 高齢化が進行した. 専業農家は, 大規模な茶栽培農家に限定されるようになった. 1980年代以降は機械
工業化
が進み, 新規学卒者のみならず, 他産業や工業他業種就業者を中途採用し, 急速に機械工業就業者を増加させていった. 地域内での労働力吸引が主であったため, 住民構成の変化は小さかったが, 就業構造が大きく変化し, かつ, 全国的な工業生産システムのなかに組み込まれた地域に再編された.
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