限られた研究費・労働力・調査時間の中で研究を行う研究者にとって、
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参加型調査は非常に魅力的な調査方法である。
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参加型調査には、広範囲で大量の生物観察データが得られる、得られたデータを使用して研究ができるといった、研究者にとってのたくさんのメリットがある。また、
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参加型調査は研究上の調査手法というだけではなく、研究のアウトリーチ活動になることや、
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の自然への関心を高めることができる、科学リテラシーの普及活動になるといった、研究者の社会貢献的な意味合いのメリットも、
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参加型調査から受け取ることができる。研究者(
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参加型調査の立案者)がこれらの
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参加型調査のメリットを十分に得て、目的を達成するためには、
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参加型調査の特徴を知り、適切なデザインをすることが必要である。海外における
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参加型調査の特徴を分析した研究によると、様々な
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参加型調査を主に、1.参加者が特定の少数で計画的に行うか/参加者が不特定多数で自由に行うか、2.参加者に求める調査の負担が大きいか/小さいか、の2つの軸で類別できるとされている。本特集ではさらに、3.調査対象の生物種が特定の少数か/不特定多数か、というもう1つの軸を加え、様々なデザインの
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参加型調査について紹介したい。東北大学の大野ゆかりが、不特定多数の参加者によって、簡便な調査方法を用いた、特定の生物群(ハナバチ類)を調査対象とする
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参加型調査について情報を提供する。京都大学の森井悠太が、たった1人の
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が多大な労力を払うことによってもたらされた、外来種・マダラコウラナメクジの調査データを基にした研究について情報を提供する。さらに、バイオーム(株)の藤木庄五郎博士は、不特定多数の参加者が簡便な調査方法で不特定多数の生物種を対象とする
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参加型調査について情報を提供する。最後に、東京大学の一方井祐子博士は、生態学に限らない様々な分野の
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参加型調査を俯瞰しつつ、
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科学(シチズンサイエンス)の可能性と課題を議論する。本特集では、研究者(
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参加型調査の立案者)が
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参加型調査のメリットを十分に得て、目的を達成するための適切なデザインの提示を目指す。本特集が読者らにとって、
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参加型調査の理想や、
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科学のもたらす未来について議論するきっかけとなることを期待したい。
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