北海道十勝堀力で発生した3例の重種の子馬白筋症について臨床病理学的観察を行った. 3例とも生後1日以内に発病し, おもな臨床症状は起立困難, 哺乳困難および著しい心悸亢進と呼吸速迫であり, いずれも1~2日間の経過で死亡した. 病理学的検査では全身の骨格筋および舌と横隔膜における著しい筋線維の変性が認められたが, 心筋には異常が見られなかった. 発病子馬の血清酵素活性値 (GOT, CPK, LDH) はいずれも激増し, 血清セレニウム (Se) は65ppb以下の著しい低値であったが, 血清トコフェロール (Toc) は正常値を示した. しかし, 臓器中のSeとToc濃度は著しい低値であった. 母馬の血清SeとToc値も発病子馬と同様の所見を示し, さらに給与飼料中のSe含量はすべて50ppbDM以下の欠乏値であり, α-Toc含量も大半が3mg/100gDM以下の著しい低下であった.
以上の成績から, 重種の子馬白筋症の原因も, 母馬に対するSeとTocの給与不足によるものと判断された.
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