記憶障害が存在するもののその他の認知機能はおおむね正常で, 自立した日常生活が継続できるような段階は, Mild cognitive impairment (MCI) という名称で, 近年定義づけられ, Alzheimer 病 (AD)の発症予備群と考えられている. そこでMCIと正常加齢の脳機能画像上の違いを明らかにする目的で, 19名のMCI患者, 23名のAD患者, 15名の正常高齢者において, IMP-SPECTを用いて局所脳血流の測定を行った. 平均MMSEスコアは, MCI群が25.3±1.2 (mean±SD), AD群が17.5±3.3であった. 後
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, 前頭葉, 側頭葉, 頭頂葉に関心領域 (ROI) を設定し, 小脳のROI値に基づいて標準化して, 脳血流比を算出した. また Statistical Parametric Mapping (SPM) を使用して, ボクセル単位での画像比較も行った. その結果, 後
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における局所脳血流比は正常高齢者群と比較して, MCI群 (0.956±0.080), AD群 (0.833±0.118) ともに有意に低下していた. その他の領域の局所脳血流比は, AD群と正常高齢者群との間でのみ有意差を認めた. 後
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局所脳血流比を用いて正常高齢者とMCI患者を鑑別する場合, 特異度を80%に設定した際の感度は80.5%であった. SPMにより, 正常高齢者とMCI患者の脳血流画像を比較すると, ROI解析と同様に, 後
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においてのみ有意差を認めた. 以上の結果から, 後
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の脳血流低下を示すMCI患者はADへ進行する危険性が高いことが示唆され, 脳血流画像からMCI患者のADへの進行を予測可能であることが確認された.
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