本稿は,美術作品を比較して美的理念を抽出させる鑑賞教育方法の可能性を検証する。まず,作品から直観的に感じられる美的理念を言語化することで,曖昧な印象が明確になり,作品の理解・鑑賞も進むとした。次に,同一作者の類似モチーフの作品を比較することで,作品の根源を時代や作者に還元しないで,より純粋に美的理念を検討できる可能性を指摘した。そして具体的には,菱田春草の「黒き猫」と「柿に猫」から「品格」と「かわいい」という対照的な美的理念を比較抽出させる,高等学校での鑑賞授業を構想した。それを授業実践して,その教育的可能性を実証した。
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