マダラガ科のツシマキモンチラシEterusia watanabeiは,長崎県対馬には多産するものの,日本国内の他の地域で継続して生息が確認されたことはなかった.広島県東
広島市
では,2006年に初めて本種が確認されてから,2011年までに合計5個体が確認され,その中には交尾中の雌雄も含まれているので,個体数は少ないものの本種が定着していると考えられる.対馬産と比べると,東
広島市
産の本種は,前後翅の白点の発達が悪い傾向が見られるが,対馬産にも東
広島市
産と同程度の個体が混じるため,斑紋だけから完全に区別することはできなかった.東
広島市
で本種が採集されたのは標高約700m地点で,他に日本本土唯一の採集記録である和歌山県高野町の1♂は,標高約800m地点で採集されている.長崎県対馬では海岸線から標高200m程度で本種が多く見られることと比較すると,本土での採集地点はいずれも高標高である.対馬と本土では,本種の生息環境が異なるのかもしれない.日本における本種の分布が対馬と広島県東
広島市
に限定されるとは考えにくく,これから各地での生息調査が必要である.
抄録全体を表示