目的 東京都における慢性疾患をもつ新生児による NICU 長期入院の実態を明らかにし,今後の病床整備計画見直しおよび国への提案要求の基礎資料とする。
方法 1989年から1998年の10年間に東京都内の周産期母子医療センター18施設から東京都周産期医療情報データベースに登録された46,309件の NICU 収容ハイリスク新生児データより入院日数が連続して90日以上を要した全患児3,000症例を抽出し入院長期化の要因について検討した。
結果 1. 入院日数90日以上でその後の入院日数が少ない群は在胎週数では29~30週群,出生体重では1,000~1,499 g 群の児であった。入院日数は全体で125日(50パーセンタイル,以下同じ),在胎週数29~30週群,出生体重1,000~1,499 g 群でともに106日であった。
2. 転帰別に入院日数をみると,全体では「疾患合併退院群等」136日,「軽快退院群等」119日であった。在胎週数別では「疾患合併退院群等」の中の31~32週群が107日,「軽快退院群等」の中の29~30週群が104日であった。出生体重別では両群とも1,000~1,499 g のグループでそれぞれ116日,104日であった。出生場所別にみると,全体では「院内出生」124日,「院外出生」127日であった。
3. 基礎疾患について在胎週数別,出生体重別に比較すると,呼吸窮迫症候群,気管支肺異形成,慢性呼吸器疾患は29週未満群,1,000 g 未満群に,低酸素性虚血性脳症,痙攣,奇形・染色体異常は31週以上の群,1,500 g 以上の群に多かった。一方,無呼吸,一過性頻呼吸は29~30週群,1,000~1,499 g 群に多かった。転帰別では,無呼吸と一過性頻呼吸は「軽快退院群等」に多くみられた。出生場所別では,31週以上群,1,500 g 以上群で呼吸窮迫症候群,無呼吸,一過性頻呼吸が「院内出生」に,低酸素性虚血性脳症,痙攣が「院外出生」に多くみられた。
結論 合併する基礎疾患がないか,あるいは軽症で,哺育による体重増加に時間を要する在胎週数29~30週,出生体重1,000~1,499 g の場合の他に,在胎週数29週未満,出生体重1,000 g 未満では慢性呼吸器疾患を中心とした呼吸器官の未熟性に基づく疾患が,在胎週数31週以上,出生体重1,500 g 以上では低酸素性虚血性脳症,痙攣といった中枢神経系疾患,奇形・染色体異常が NICU 長期入院の一因であると考えられた。
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