ネフローゼ症候群 (nephrotic syndrome: NS) において,低アルブミン (albumin: Alb) 血症は血栓塞栓症合併のリスク因子である。症例は13 歳男児。学校検尿で蛋白尿を指摘され,血清Alb 値2.7 g/dl,尿蛋白/クレアチニン比 (urinary protein-to-creatinine ratio: UP/Cr) 2.4 g/gCr と高度蛋白尿を認め入院した。入院第5 病日に血清Alb 値が2.5 g/dl に低下し,特発性NS の診断にてプレドニゾロン (PSL) 60 mg/日を開始し,入院12 病日に寛解に至った。入院時よりFDP 9.0 μg/ml と高値であったが,寛解後も凝固異常が遷延した。先天性血栓性素因や抗リン脂質抗体症候群は否定的であったが,入院32 病日にFDP 13.2 μg/ml まで上昇し,血小板が13 万/μl まで低下したため,胸部造影CT 検査を施行し,両側肺動脈塞栓症が判明した。抗凝固療法を開始し,最終的に後遺症を残さず軽快した。小児NS において,低Alb 血症が軽度でも凝固線溶系異常が遷延する場合には,血栓症を鑑別に挙げ,積極的に画像検索を行うべきである。
抄録全体を表示