本稿の目的は「個人主義の浸透により
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結婚が普及した」という個人主義仮説を, フォーマル・アプローチによって検討することで, 新たな理論的説明を提示することである.
個人主義仮説は, 「家」や「分」を重視するような集団主義的な人々は見合い結婚を選択し, 自分の意思を尊重する個人主義的な個人は
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結婚を選択する, と仮定する. これに対して, 個人主義への志向と
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結婚の選択は必ずしも直結しない, という意識と行為の関連について批判がなされている.
そこで, 本稿では「選好の進化」によるアプローチを用いることで, 意識と行為をそれぞれ独立に扱い, その単純ならざる関係を分析する. 個人主義の浸透プロセスを考慮した
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結婚の普及モデルを構築し, 意識と行為の時系列変化を捉える.
その結果, 先行研究では想定されていなかった「慎重な個人主義」という行為パターン (選好) が析出した. 慎重な個人主義はある程度の階層維持を考慮に入れ, 見合い結婚・
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結婚を選択する.
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結婚の普及に際して, この慎重な個人主義が, 見合い結婚中心的な社会の中で
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結婚を志向する選好を社会に涵養する, という重要な役割を果たすことが示唆された.
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