共通の質問と調査方法を用いた国際社会調査プログラム1993年環境調査によるドイツ,イギリス,アメリカ合衆国,オランダの結果および,国立環境研究所が同様の質問と調査方法を用いて実施した調査データを用いて,環境に対する一般市民の環境保全行動を環境に関する価値観および社会的有効性感覚の2側面から分析した。まず価値観に関する14の文章に対する回答を用いて因子分析を行ったところ,「環境
悲観主義
」「科学技術・経済中心主義」「人間特例主義」「ダーウィン主義」に類型化できた。個別の環境問題に対する認識と価値観の関連を,環境
悲観主義
グループと科学技術・経済中心主義グループとの問で「問題の深刻さ」の認識の程度で比較した場合,ほとんどの国々で,環境
悲観主義
グループの方が科学技術・経済中心主義グループよりも深刻だという認識が高かった。また,環境保全行動について両グループを比較した場合,ドイツ,オランダなどでは環境
悲観主義
グループの方が明らかに「リサイクリング」「無農薬野菜の購入」「自動車運転の抑制」のそれぞれについて行動率が高いのに対し,日本では統計的に有意な差は認められなかった。しかし,日本独自の質問で取り上げた「社会的有効性感覚」と環境保全行動との関連については,あきらかに有意な関連性が認められた。この結論は,これからの環境政策の展開において,人々に環境の現状を訴えるだけでなく,「一人一人が何をすべきか,その結果どんな効果が得られるのか」を同時に訴える必要性を示唆しているといえよう
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