本稿では「パーソナルデータに経済的価値があるか」という問いを考察することを通じて、パーソナルデータを財として扱うことの課題を整理した。
パーソナルデータは、それが最終的には経済上の利益につながるという点では、経済的価値を認めることはできるが、その価値がどの程度であるかという算定の方法等については明確ではない。また、個人はパーソナルデータ提供の対価を正しく評価できない可能性があり、対価への意識からパーソナルデータの利活用が進まなくなる可能性がある。さらに、パーソナルデータを、経済的価値を有する財として捉えることと個人情報保護法の趣旨には相違がある。
現在、パーソナルデータの利活用を目指して情報銀行等の仕組みが展開されている。このような仕組みが有益なものとなるためには、個人や事業者のパーソナルデータの価値に対する認識を支える政策が求められる。
また、パーソナルデータには公共財的性質や外部性があり、これらの性質を踏まえて、どのようなメカニズムによって利活用を促進するのかを検討する必要がある。
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