「発達障害研究」および「特別支援教育研究」の両機関誌は,知的障害のある子どもが教育の対象とされていなかった時代から,先人たちが創意工夫し,切り開いてきた知見をまとめ,多くの人々に情報提供を行うことで,わが国の知的障害教育における教員および支援者等の養成・研修の一端を担ってきた. 本稿では「発達障害研究」と「特別支援教育研究」に掲載された論文や実践研究をもとに知的障害教育の研究動向について検討を行った.知的障害教育の研究は,それまで主流となっていた知的障害児の実態把握や事例への指導等についての研究から,特別支援教育に関するシステム等の検討や事例以外の実践の報告といった研究へと研究方法に変化が見られた.また,特別支援学校の実践研究においては,教科等横断的な視点で,また学校という枠組みを超え地域社会や関連機関等と連携した形で展開されていた. 今後,教員・支援者を支援するための情報提供はもとより,実践的な研究の向上を図ることができるよう,両機関誌が互いに連携・協力をしていくことが,知的障害教育の本質や不易流行を形にし,広く発信していくために重要である.
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