渡嘉敷島において崖から転落し,治療後に死亡したケラマジカ(
Cervus nippon keramae)1例の死亡個体分析を行った。本例は椎定8.5歳以上の雄で,体重33.5kg,全長1360mm,尾長101mm,肩高770mmであった。ライニー指数は18.5を示したことから,貧栄養状態にある個体であった。また,ケラマジカにおけるマゲシマチマダニ(
Haemaphysalis mageshimaensis)の寄生を初めて確認した。精巣および精巣上体に精子が認められなかったことから,最も低い繁殖活動状態にあったと推察された。ケラマジカは,年間を通してニホンジカ(
C.nippon)の繁殖活動の季節性をほぼ踏襲していることが示唆された。下顎左側の第3臼歯では,遠心咬頭が後方に分離形成されていたが,その成因は不明であった。剖検では,胸部および腰部胴骨系の広範囲な骨折,大腿骨の脱臼と骨折および骨折部位での出血が確認されたことから,これらの骨折が死亡原因と推察された。ケラマジカの保護,個体群の特性評価のためには,今後さらに死亡個体の収集と個体分析が必要と考える。
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