【はじめに】
外科的術後で運動・精神機能低下が著しく、経口摂取困難となった症例を担当し、アプローチのひとつとして腹臥位療法を取り入れた結果変化が得られたので報告する。
【症例紹介】
72歳男性。平成16年10月から多発性脳梗塞・パーキンソン症候群にて当院で加療中、平成17年1月絞扼性イレウス発症し他院にて手術。その後多発性脳梗塞再発症するが経過良好のため術後12日目で当院に再入院。術前の入院生活では、動作緩慢・すくみ足みられたが独歩により移動可能でADLは自立レベル。しかし平成16年12月頃より右下肢痛訴えあり、約1ヶ月間移動には車椅子を使用。
【経過】
再入院日よりPT・ST訓練開始。ADL全介助で食事は経管栄養摂取。無表情で視線が合わず、発語もみられない。端座位は体幹後傾位をとり保持不可。ゼリーで摂食訓練行うが嚥下反射の遅延のため喉頭付近に貯留し嚥下困難。訓練開始2週間目から腹臥位療法を導入。
導入開始:PT訓練時半腹臥位より開始し5日目より腹臥位へ移行。STでは車椅子座位にて腹臥位実施。PT・STともに20分間行う。腹臥位セッティングは全介助で自発性ないが、笑顔や首ふりなどの意思表示みられ単語レベルでの発語あり。移動は車椅子全介助。
10日後:移乗動作介助量軽減し、端座位保持が可能。自発性徐々に増え、靴を脱ごうと手を掛ける様子あり。コミュニケーションには大きな変化みられず。
20日後:起居動作軽介助で起立動作も自力にて可能。自ら歩こうとされるも体幹後傾著明で重度介助を要する。
30日後:腹臥位後、頭部挙上や体動みられるも体位変換は不可能。発語増加するが意志主張は頷きが多い。平行棒内歩行時、重心後方にあり腋窩介助。食事は経管栄養から主食うらごし・副食ミキサーを要介助にて開始。
60日後:平行棒内歩行軽介助、移乗動作は腋窩介助にて可能であり一連の動作は自ら行われる。靴の着脱可能。訓練中終始笑顔がみられる。誘導にて車椅子駆動可能。食事は主食全粥・副食ミキサーの形態となりスプーンにて自力摂取レベル。
【考察】
腹臥位導入後、精神面の変化がはじめにみられた。普段行うことのない腹臥位をとることで体幹前面からの刺激が入力され精神面の活性化に繋がり、また腹臥位となる前後の過程にアプローチすることで身体機能にも変化がみられたのではないかと考える。
【まとめ】
今回腹臥位療法を実施し予想以上の結果が得られた。一例のみの実施であったため、今後のアプローチに腹臥位療法を取り入れて有効性について検討していきたい。
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