Methicillin-resistant
Staphylococcus aureus (MRSA) に対するvancomycin (VCM) とβ-lactam剤の併用効果, および効果的な併用
投与方法
について,
in vitro実験にて検討した。
(1) 臨床分離55菌株に対するVCMと4種β-lactam剤 (cefotiam; CTM, cefmetazole;CMZ, flomoxef; FMOX, imipenem; IPM)のmin. FIC indexは, いずれも1以下と優れた併用効果を示した。
(2) 投与量: MRSA2菌株に対して, VCMとβ-lactam剤 (4種) を一方の濃度のみを変えて同時併用作用させた場合の抗菌効果 (短時間殺菌作用, postantibiotic effect [PAE]) は, 併用するβ-lactam剤濃度に依存して増強したのに対し, 併用するVCM濃度はMIC以上高濃度になっても抗菌効果の増強は認められず, むしろやや減弱する傾向を示した。Autosimulation systemを用い, ヒト血中濃度動態にてVCM (0.25g, 0.5g, または1g) とFMOXを同時併用投与した場合も同様に, VCM0.25g併用時の短時間殺菌作用がもっとも優れた結果を示した。
(3) 併用順序: MRSA2菌株に対して, VCMとFMOXを, VCM2時間先行作用, FMOX2時間先行作用, および同時併用作用の3とおりの順序にて併用作用した場合の抗菌効果 (短時間殺菌作用, PAE) は, FMOX単独作用にてもある程度抗菌効果が期待できる中等度耐性株でFMOX先行時または同時併用時に, FMOX高度耐性株で同時併用時に優れた結果を示した。一方, VCM先行作用時の抗菌効果はいずれの場合も, 他の併用順序に比べやや劣る結果を示した。また, ヒト血中濃度動態にて2薬剤を併用投与した場合の抗菌効果もほぼ同様の傾向を示した。
以上の結果より, MRSAに対し, VCMとβ-lactam剤は併用効果を認めたが, VCMの1回投与量の増量は, 安全性ばかりでなく併用効果の点からも勧められるものではなく, 常用量または場合によってはそれ以下の投与量でβ-lactam剤と同時併用投与することが, 優れた臨床効果に結び付くものと考えられる。
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