本研究では, 小学校5年生男女児童を対象として, 校庭の「うんてい」施設を利用して, うんていの端から端までの移動の成否にかかわらず, 各個人, 毎回, 最低, 1回の捉まり移動遊び (5~10分程度) を週5日の頻度で6ヵ月間にわたり実践させ, その際におけるうんてい移動能力と能動
握力および受動握力
への効果について検討した.おもな結果は, 以下の通りである.
1.6ヵ月間のうんてい遊び期間中におけるうんていの端から端までの移動達成者の比率は, 男子は50.0% (18名中8名) から66.7% (18名中12名) , 女子は30.8% (13名中4名) から61.5% (13名中8名) に増加した.しかし, これらの達成率は先行研究での低・中学年のものと比較して低い値であった.
2.うんてい遊び開始1ヵ月目までに達成できた「達成群A」 (男子9名, 女子4名) のうんてい移動タイムの平均値は, 終了時では男女とも開始時と比較して有意な短縮を認めた.
3.うんてい遊び開始2ヵ月目以降に達成できた「達成群B」 (男子4名, 女子5名) の中には, 達成後, 終了時までの各月で継続して達成できない者もいて, うんてい移動能力の向上に安定性や確実性が認められなかった.
4.うんてい遊び終了時においても達成者となれなかった「未達成群」は, 期間中も顕著な達成本数の増加を見せた者が少なく, うんてい遊びに対する興味・関心の低さが示唆された.
5.6ヵ月間のうんてい遊び終了時において, “運動全般に意欲的”と推察される「達成群A」は受動
握力
が通常群より有意に高かったが, 運動群全体としての能動, 受動
握力
は通常群と比較して男女とも有意差を認めなかった.以上の結果から, 小学校高学年児童における長期間のうんてい遊びの継続は, 意欲的に各種運動に取り組む一部の児童を除いてうんてい移動能力, 能動および受動
握力
に顕著な効果は認められず, 遊びの効果的な至適時期を逃していることが推察された.したがって, 本結果および先行研究での結果を総合的に考察すると, うんてい遊びによる受動
握力
の向上は小学校低・中学年期のほうが至適時期であることが示唆された.
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