北海道南西部,樽前火山の最初期の降下火砕物である樽前d降下火砕堆積物(Ta-d:8.7~9.2 cal ka)を,北海道東部の複数の遺跡および掘削コアから発見した.対比においては,Ta-c2(2.5 cal ka)に覆われる層位関係や年代に加え,模式地試料との層相および岩石学的特徴(特に火山ガラス組成の高TiO
2と低K
2O値)の類似性に注目した.Ta-dは模式地において,下部の軽石質なTa-d2と上部のスコリア質なTa-d1からなるが,釧路地域においてもTa-d1とd2セットが厚さ5 cmで堆積するのが明瞭に確認できる.今回の発見により,北海道東部およびその周辺の太平洋沖に,完新世初期を示す広域テフラが導入されたことになる.
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