医療現場における看護師への
暴力
が増加している。
暴力
行為は患者,家族によるものだけでなく職員の間にも存在
し,職場の安全性の低下から職務満足の低下をきたすなど
見過ごすことのできない問題である。2003年の看護協会の
調査を基に,院内における
暴力
の現状把握と看護職員の暴
力に対する考えを知るためアンケート調査を実施した。
〈研究目的〉1.院内における「患者・家族から」と「職
員から」の
暴力
の実態を知る。2.
暴力
を受けたときの感
情や対処方法を知る。
〈方法〉全看護師215名を対象に無記名留め置き式アン
ケート調査を平成20年8月に実施した。「保健医療福祉関
係職員の
暴力
被害に関する調査」を基に作成した独自の調
査票を用いて,過去1年間に「
暴力
を受けたことがある
か」,ある場合は「その行為を
暴力
ととらえたか」,「その
理由は何か」,「
暴力
を受けたときの気持ちや対処方法」に
ついて調査した。
〈結果・考察〉院内に種々の
暴力
が存在し,それに対する
対策が不十分であることが明らかになった。過去1年間に
暴力
を受けたことがあると答えたのは「患者・家族から」
37%,「職員から」30%であった。患者・家族からは身体
的
暴力
が多く,行為に対しストレスや恐怖を感じていた。
職員からは医師による言葉の
暴力
が最多であった。様々な
行為を受けてもそれを
暴力
ととらえるかどうかは相手の状
態や本人の感情によるものが大きく,すべてを
暴力
と捉え
ているとは限らないことがわかった。
暴力
を受けたときの気持ちは「関わりを持ちたくない」
「嫌悪感」「恐怖感」が多かった。対処法として「話を聞
いてもらう」,「相談する」が多いが,個人でできる対処法
には限りがあるため問題の解決には結びついていない。ま
た,院内の
暴力
対策についても十分でないという意見が挙
げられた。
院内
暴力
は身近にありながら取り上げにくい問題であ
る。しかし,職場の安全を守り職務満足を向上させるため
には報告のシステム作りや職員の意識の向上など組織全体
での取り組みを進めていくことが必要である。インシデン
トレポートで情報を共有化し安全対策に取り組んでいるよ
うに,
暴力
についても報告,情報共有のシステムを作るこ
とが必要である。同時に,
暴力
防止プログラムの導入など
組織的な教育を進め,職員間の意識を高めることも重要な
課題といえる。
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