本稿では,まず交通整備水準と生産性分析に関する既存研究を6つの視点で分類し,計測手法の多様性と交通整備水準の影響に関する見解の不一致を確認した.また,実証分析では交通整備水準との相関関係を見る上で必要な全要素生産性(TFP)の計測において1時点の労働分配率を用いる場合とその分配率を時系列・クロスセクションデータから推定する場合の2つの方法を用いた.その2つを比較すると,同じデータセットにも関わらずTFPの計測方法の違いによって交通整備水準の影響が異なることが分かった.そのため,今後の実証分析の結果を適切に理解するためには,交通整備水準と生産性分析に関して計測手法が影響することを十分に理解し,その影響を判断すると共に,より一般的には標準的な交通整備水準の生産性への影響計測マニュアルの整備が必要である.
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