知的障害養護学校の中等部用教科書指導書や高等部用学習指導要領解説には, 授業の方法論として「指揮」を用いることが若干述べられているが, 「指揮者」が音楽の演奏, その他にどう影響を与えているのかについては研究されてこなかった。それで, 筆者は, 合唱や合奏が出来る生徒の在籍が多い高等養護学校での実践を報告する。さて, この授業は公教育であるので, 授業の実践は上記の文部省著作物に従った。そして, 指揮者の付く時と付かない時とを比較した。その結果, 指揮者か生徒の正確なアンサンブルや, 音楽表現―能動的行為である―に貢献したことを確認した。これは生徒自身以外の「人」 (指揮者) を介さないと成立しない。ゆえに, 指揮者は, アンサンブルにおける必要に加え, 知的障害生徒が学習すべき社会性の獲得にも貢献しているのである。
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