(1)筆者らは,伊豆沼のガンの個体群の大きさとその季節的ならびに経年的変化を知るために,1971年から1977年までの7越冬期にわたって,宮城県伊豆沼を塒とするマガン,ヒシクイおよび両者を一括したガン類の羽数カウントを行なった.カウント方法は,早朝に塒から飛び出す群のカウントを月1~2回行ない,そのほかに,早朝カウントの便法や日中塒または採餌地でのカウントを月3~4回行なった.7年間の月平均カウント回数は約6回に達した.
(2)伊豆沼のガンは,マガンが総羽数の60~80%を占め,それ以外はほとんどヒシクイである.1972年にはマガンが約3,000羽,ヒシクイが約200羽であった.1977年にはマガン5,600羽,ヒシクイ1,400羽に増えた.自然環境が悪化しているにもかかわらず,ガンの羽数が増加した原因の一つは,1971年の法改正によりマガンとヒシクイが狩猟鳥からはずされたことであろう.
(3)ガン群の大きさとその季節的変化を知るために,月間の最高羽数点をプロットする羽数グラフを作った.グラフには2つの型があり,一つは帽子型で,他は2峰型である.ガン類は,9月下旬に少数羽が飛来し,10月中に急増し,11月~12月に最高羽数に達し,1月下旬からやや減少し,2月下旬~3月中旬に渡去する.これが帽子型グラフとなる.積雪が多く1か月前後続けば,ガンは塒を一時的に南方に移し,雪が解ければまた伊豆沼へ帰る.これが2峰型グラフとなる.
(4)マガンの羽数グラフはガン類の羽数グラフと相似形をなしている.ヒシクイはやや異なり,羽数増加は10月に1回,12月に1回と2回あって,12月に最高羽数に達する.積雪に対しては,ヒシクイもマガンと同様に南方へ移動するが,軽度の積雪の場合は伊豆沼周辺にとどまり,マガンに比し南方への移動の規模が小さいようである.
(5)渡去の日時は積雪と密接な関係が認められ,積雪が少ない年は羽数グラフは帽子型で,2月に渡去することが多く,積雪の多い年はグラフは2峰型で,3月に渡去する.
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