家畜•家禽から排泄される環境負荷物質が環境保全面から大きな問題になっている.本総説では,ニワトリおよびブタからのこれら環境負荷物質を栄養面から低減するための最近の研究成果をとりまとめた.
1) 飼料の加工処理(ペレット,エキスパンダー)および酵素剤(セルラーゼ,プロテァーゼ等)の使用によって栄養素の消化率を高めることにより,糞量の減量が可能である.また,飼料の低タンパク質化により尿量を約40~50%低減することが可能である.
2) 窒素(N)排泄量については,飼料中のタンパク質(CP)含量を下げ,これに不足するアミノ酸を添加することにより,飼養成績の低下や体脂肪量の増加をもたらすことなく,ブタで約30%,ブロイラーで約10%,産卵鶏で約20%のN排泄量の低減が可能と推定された.ブロイラーで低減率が低い理由は,飼料の低CP化によって腹腔内脂肪量が増加するため,飼料のCP水準を大幅に低下できないためである.この点については,今後の研究が必要である.
3) リン(P)排泄量については,飼料中のP含量を下げ,これに微生物(Aspergillus niger)由来フィターゼを添加することにより,生産性を損なうことなくブタと産卵鶏で約30%,ブロイラーで約40%のP排泄量の低減が可能と推定された.
4) ブタにおける糞への銅(Cu)と亜鉛(Zn)の排泄量の低減については,離乳期および育成期における飼料へのCuおよびZnの添加量を,Cuの成長促進効果を犠牲にすることなく,かなり下げ得る可能性のあることが示唆され,これによりCuとZnの排泄量の低減が可能と考えられる.この点については,今後の研究が必要である.
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