本研究は,足尾銅山の山林荒廃とその復旧の歴史的変遷を通して,被害を最も強く受けた松木地区やそこに残る遺構の意義を検証している.歴史的変遷の整理においては,古河所蔵の新たな史料なども加えて,国,県,古河がどのような対応をしてきたのかを纏めた.その結果,山林の荒廃と復旧は足尾銅山の産銅技術と環境対策の発展のみならず,明治からの足尾における治山・砂防事業の試行錯誤の過程を如実に表していることがわかった.これらの知見により,地区や遺構は歴史的遺産として価値があること,また,保存,復旧,活用をバランス良く進めることによりそれらの活動に相乗効果が生まれることが十分にあることを示した.
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