本研究は,20世紀初期の日本における中等図画教員養成の展開と特徴を明らかにすることを目的とし,東京高等師範学校と東京美術学校に焦点を当てて分析を行った。両校のカリキュラム,教員構成,教育内容を詳細に検討し,比較分析を通じて当時の図画教員養成の特徴を解明した。その結果,専門性の重視,実践的教育の重視,総合的な教育の実施,日本と西洋の図画教育の融合,教育目的に応じた差異化という5つの特徴が明らかになった。東京高等師範学校では図画と手工のバランスを重視し,より実用的な教育を目指していたのに対し,東京美術学校ではより専門的な図画教育に重点を置いていた。これらの特徴は,当時の日本の教育政策や社会的要請を反映したものであり,明治期の急速な近代化と西洋文化の導入という背景の中で,日本独自の図画教育のあり方を模索した結果であると考えられる。
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