本研究は,「遊び」を活かした美術教育実践を推進した乾一雄(1920-1992)の構想と実践を考察する継続研究の一報である。前報では,時代背景をふまえ,乾の構想と教育実践事例についての史的考察を行なった。本研究では,この成果並びに「造形遊び」の展開をふまえて,まず美術教育実践における「遊び」概念全体を<方法としての「遊び」>,<内容としての「遊び」>の2つの枠組みに整理した。そして乾の構想は,内発的な動機づけに基づき活動をする子どもの姿を想定したという意味で,<方法としての「遊び」>の中に位置づけた。また,乾の集大成の提案である大阪市立大開小学校のカリキュラムの授業像を考察した。「線,色彩」などの各領域にある造形要素の操作性を活かして動機づけをする「きっかけ題材」,題材群の中での基本の習得などをふまえ,子どもが主体的に目標を達成する展開を準備していたことを確認した。
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