3歳から5歳の吸指癖を有する小児(吸指癖群)259名と,吸指癖を含めた他の口腔習癖の全くない小児(無習癖群)671名,総計930名を対象に吸指癖が乳歯咬合に及ぼす影響を調査,検討し,以下の結果を得た.
1.上顎前突の占める割合は無習癖群では3歳9.5%,4歳9.8%,5歳10.0%であるのに対し,吸指癖群では3歳23.7%,4歳16.3%,5歳24.2%となっており全ての年齢で吸指癖群が高い発現率を示し,とくに,3歳では両群間の発現率に統計的な有意差が認められた.
2.開咬の占める割合は無習癖群が全ての年齢で約2-3%であるのに対し,吸指癖群では3歳12.6%,4歳7.7%,5歳15.1%となっており,3歳および5歳では両群間の発現率に統計的な差が認められた.
3.前歯咬合への影響では年齢的に顕著な差異は認められなかった.
4.Terminal planeのtype別発現率において3歳,4歳では吸指癖群と無習癖群の間に顕著な差は認められなかった.
5.5歳において吸指癖群は無習癖群に比してmesial step typeの発現率が有意に低く,distal step typeの発現率は有意に高くなっていた.
以上の結果より吸指癖による乳歯前歯部への影響は3歳までの早期に発現し,terminalplaneへの影響は5歳ころから発現することが示唆された.
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