絶滅が危惧されているアポイ岳の固有種ヒダカソウの個体群動態の特性と、盗掘による開花個体の減少が個体群の生育段階構造にもたらす影響について検討する。比較的盗掘の影響が少ないと考えられる生育地の合計3.2m
2区域内で、
根出葉
と花の数による生育段階の個体センサスを3年間行った。センサスした個体は1年目が303個体で、3年目には主として生育段階が
根出葉
1枚の個体数の減少によって278個体になった。全個体数の約90%を占める
根出葉
1枚および2枚の個体は、それぞれ平均約65%が翌年も同じ生育段階を維持し、
根出葉
を増やしてより大きい生育段階へ移行した個体は、平均約20%及び10%であった。開花個体の割合は1%未満であり、開花した翌年は花をつけなかった。新規参入個体は2002年に31個体、2003年には17個体と少なく、死亡個体数を下回っていた。また、ヒダカソウの主要な個体群間で生育段階構造は大きく異なった。登山道沿いの個体群では、開花個体を含むサイズの大きい個体が極端に少ない傾向がみられ、開花個体が全くみられない集団も存在した。盗掘等による開花個体の減少が続けば、新たな個体の参入が減少し、個体群の維持が難しくなると考えられる。
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