陸稲品種間のかんばつ回避性の差異を, 大気飽差(VPD)が比較的小さい日本の圃場条件下において, 群落表面温度(T
c)から気温(T
a)を引いた値である葉気温較差(ΔT)を用いて推定できるかを検討した. 主に根系の到達深度の違いから, かんばつ回避性が大きく異なることが想定される陸稲品種群を, 降雨を遮断し, 2001年には潅水および無潅水の, 2002年には無潅水のみの土壌水分処理をそれぞれ行った畑圃場において供試した. 両年とも出穂までの約1ヵ月間に各6日, サーモグラフィー装置で測定したT
cと, 気温計で測定したT
aからΔT(T
c-T
a)を得, ほぼ同時にポロメーターで測定した気孔コンダクタンス(g
s)との関係を調査した. また, 2002年には収穫期に測定した根系の到達深度との関係も調査した. 2001年には, 測定期間中の平均値でみた品種の順位関係は, それぞれの土壌水分処理区において, ΔT(低い順)とg
s(高い順)とで完全に一致していた. しかし, 潅水区におけるそれらの順位は無潅水区とは異なっており, かんばつ回避性を説明するものではなかった. 2002年には, 全ての測定日および測定期間中の平均値で, ΔTに有意な品種間差異が認められ, 深根性の品種ほどΔTは低く, g
sは高かった. 以上のことから, 無潅水条件下におけるΔTは, 日本の圃場条件下において, 陸稲のかんばつ回避性を推定評価する指標として有効であると結論した.
抄録全体を表示