筋腱移行部の微細構造を立体的に観察する為, 走査型電子顕微鏡 (scanning electron microscopy: SEM) を用い, 正常家兎の大腿直筋, 内, 外側広筋および腓腹筋の観察を行い, 透過型電子顕微鏡, 光学顕微鏡による筋腱移行部の研究の文献的考察を加え, 比較検討した。筋の収縮, 弛緩に対し, 筋腱移行部にどのような変化が起こるのかを観察する為, 筋を電気刺激により強縮状態とし, そのまま液体窒素で凍結, 固定し, EDTAによる脱カルシウムイオン作用により弛緩状態とし固定し, 両者を比較した.光学顕微鏡による観察は, それらの補助としたが, 以下次の結果を得た. (1) 筋と腱の結合は, 筋内膜, 筋周膜と腱組織の結合織性の結合と, 筋線維先端と腱組織の, 膠原線維を介した結合の2つによる。 (2) 筋組織と腱組織は, 明瞭に区別することができ, 互いの組織内に入り込むことはない. (3) 腱は, 筋腱移行部において板状の形をなしてゆき, その一側面 (境界面と呼ぶ) で筋と結合する.この際, 筋は, 筋線維, 筋原線維の先端をもって腱の境界面に斜めに結合していた. (4) 筋の結合織である, 筋内膜, 筋周膜は, 腱境界面の膠原線維へ移行してゆき, 筋と腱を結合していた. (5) 筋線維は, 腱境界面にその先端を向けて斜めに走行してゆき, その先端では筋原線維ごとに, 細い膠原線維により腱境界面と結合されていた.SEMでは筋原線維のZ膜, 筋節, T系 (T system) の観察が行われ, Z膜でT系により隣接する筋原線維が結びつけられ, 格子を形成していた.筋鞘の観察は充分になし得なかった. (6) 筋原線維先端は, Z膜で終っており, 細い膠原線維は最先端の筋節に結合し, 腱境界面と筋原線維をつないでいた. (7) 筋の矢状断面で, 腱線維と筋線維のなす角を, 筋の腱に対する入射角とすると, 腓腹筋において入射角は, 筋収縮時約35°と増大し, 弛緩時に約25°と減少した。尚筋節は, 筋収縮時約1.4μm, 弛緩時約2.0μmの長さであり, 形も丸みをおびた感じから, 細長い感じとなっていた。 (8) 筋と腱の結合状態は, 筋の矢状面, 前額面で明らかとなり, 横断面でははっきりと確認できなかった.
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