堆肥化における微生物の役割を明らかにするために,まず,地球の生物循環における微生物による有機物分解の意味をエントロピーの観点から論じた。すなあち,微生物は物のエントロピーを熱のエントロピーに変換する役割を持っている。有機物分解に伴って排出される廃熱は水循環によって最終的に宇宙空間に捨てられ,地球環境は一定のエントロピー状態を保っている。堆肥化は微生物分解を人為的に整備することによって加速することにほかならない。巷には有機物分解促進を謳う数多くの微生物資材が出回っているが,必ずしも効果が保証されているわけではない。中には殺菌資材と同程度の分解促進効果しかなく,培地の影響に過ぎない資材もあり,開放系での微生物資材の効果は疑わしい場合が多い。一方,生ゴミ処理機のような閉鎖系での油脂分解には微生物資材添加効果が期待できるだろう。総じて,微生物資材に過大の期待を持つのは考えものであり,我々は今後,農業技術のひとつとして微生物資材の効果を謙虚かつ地道に検証していく必要があるだろう。
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