【はじめに】
徳島県では平成8年4月に「ひとにやさしいまちづくり条例」が制定され、バリアフリーの環境整備に取り組んでいる。そこで、本研究では歩行者が頻繁に利用している橋に着目し、車椅子使用者にとってやさしい橋となっているか、障壁となる橋の設計とはどのようなものなのかについて調査・検討を行なった。
【対象及び方法】
対象とした橋は、徳島市中心部の10橋とした。被験者は成人男性20名(年齢20~25歳、平均22.0歳)とし、標準型車椅子を用いて橋を自走させた。自走経路は、橋に至るまで及び橋を渡り終えてからの歩道部(以下、橋梁取り付け部)と橋の歩道部(以下、橋梁歩道部)とし、橋梁取り付け部を渡り終えた後、アンケート調査を行なった。アンケートの内容は縦断勾配(水平面に対して前後の勾配)や横断勾配(水平面に対して左右の勾配)、歩道幅等の構造的事項、車等に対する恐怖感等の主観的事項とした。回答は「思う」、「やや思う」、「あまり思わない」、「思わない」の4段階とし、「思う」「やや思う」の回答が被験者の3分の1を超えた場合を問題ありとした。なお、勾配等は測量士により測定した。
【結果】
縦断勾配は、両部共に問題あり6
橋
、橋梁取り付け部のみに問題あり3橋の計9
橋
(90.0%)に問題を認めた。橋梁取り付け部が急であれば、橋梁歩道部が3%の緩やかな勾配であっても橋梁歩道部に問題ありとなった。しかし、橋梁取り付け部は5%以下、橋梁歩道部は2%以下であれば問題なしであった。
横断勾配は、両部共に問題あり3
橋
、橋梁取り付け部のみに問題あり2橋の計5
橋
(50.0%)に問題を認めた。橋梁取り付け部、橋梁歩道部共に3%以下であればほぼ問題なしであったが、縦断勾配が緩やかであれば3%程度の横断勾配でも問題ありとなった。
歩道幅は、両部共に問題あり3
橋
、橋梁取り付け部のみに問題あり2橋の計5
橋
(50.0%)に問題を認めた。橋梁取り付け部では3m以上、橋梁歩道部では4m以上あれば問題なしであった。
段差は、両部共に問題あり1
橋
、橋梁取り付け部のみに問題あり3橋の計4
橋
(40.0%)に問題を認めた。わずか1cmの段差であっても2橋に問題を認めた。
車等に対する恐怖感は7
橋
(70.0%)に問題を認めた。問題なしとなった橋は歩道幅が4m以上もしくは交通量の少ない橋であった。
【まとめ】
橋の勾配や歩道幅、段差等のすべてに問題なしであったのは1
橋
(10.0%)のみであった。車椅子でも渡りやすい橋にするためには、縦断勾配は橋梁取り付け部5%以下、橋梁歩道部2%以下、横断勾配は3%以下、歩道幅は4m以上、段差はなしにすることが考えられた。既存の橋でこれらの条件を満足させるには架け替え、もしくは新設にまで及ばなければならないため、これらの条件が今後の橋梁設計の標準となるように普及させる必要性が示唆された。
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