本稿はGarcia等が提唱した歩行についての数理モデル「Simplest walking model」の解説である。主な読者として、物理や数学に興味のある理学療法士・作業療法士を想定した。また普段数学になじみのない方でも、その導出の概略を理解できるように、式変換などについて逐次説明するよう心掛けた。解説中に出てくる数学的用語や解法を元に、適宜、専門書などを参照頂ければ、最短経路で歩行の数理を理解できる内容となっているので、意欲のある方は、ぜひ紙とペンを使って式の導出を追って頂きたい。もし、大学の物理に興味のある高校生や、教員がお読み下さったならば、本稿を解析力学の簡単な例題としてお使い頂ければ幸いである。
本稿では,時間を言語として見る立場から,療育教室に通う子どもの母親が語る我が子の成長を,時間のことばとして記述することにより,対話を通じ母親が理解する成長とはどのようなものか,成長をナラティヴとして理解するとはどのようなことかを議論する。筆者(山本)は,母親との対話と療育教室での参与観察を行い,成長がどのような刻み方(punctuation)を有した時間で語られるかに注目した。母親が語る時間のことばには,①別々に語られる時間のことば,②相反する時間のことばがせめぎ合う葛藤,③全ての時間を等価に語る時間のことば,があった。母親は,どんな時間も選ばれる価値を等しく持つとする『等価な時間』という視座を獲得し,それに沿って成長を理解していった。『等価な時間』とは,成長をナラティヴとして理解するための考え方であり,これまでの成長の理解を見つめ直すときに役立つ時間のことばのポリフォニーのことである。
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