現在の日本の学校教育の基本は系統学習であり,本人の興味関心にかかわらず,積み上げ学習が中核となっている。特に小学校や中学校での算数・数学では一斉学習による指導で,本人の理解深度にかかわらず先に先にと進んでしまう傾向にあり,「算数・数学嫌い」を多発することになりかねない。
そこで,「上級生が下級生を教える」を核として2017年度から兵庫県内S中学校の協力を得,「全校一斉の数学の教え合い学習(Sトレ)」の基礎研究・試行実践を行った。この基本コンセプトは,エドガー・デール(Edgar Dale)の「経験の円錐」で,これは「他の者に教える」という行動により,その本人の知識が定着しやすいという理論である。この学習の推進で「教える側」と「教えられる側」の双方に学習効果が高まることを期待して,研究を進めている。さらに,デシの「内発的動機づけ」理論も参考にし,数学に対する「やる気」を惹起させたいとの考えからの学校の教員にもアドバイスを行った。
抄録全体を表示