1996年7月の大阪府堺市における大腸菌O-157感染症症例のうち,重症脳症を伴う多臓器不全症例を経験した。症例は7歳,女児。発熱・腹痛・血便を認めO-157感染症と診断された。第5病日より溶血性尿毒症症候群の発症と同時に急性脳症を合併し,意識レベルが低下した。2,3日で多発性脳梗塞が急激に悪化,また,血管透過性の亢進した活動性病変が長期にわたって持続し,経過中,心筋炎・血管透過性肺水腫などを合併した。血液透析・血漿交換・エンドトキシン吸着などの治療にもかかわらず,救命不可能であった。他臓器に比べ脳障害はとくに不可逆性で,進行が急速かつ重篤なためその早期診断と治療が最優先されるべきである。
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