症例は68歳女性であり,
歯間ブラシ
を習慣的に歯周ポケット内に挿入して清掃していたところ,
歯間ブラシ
の先がなくなっていたことに気づいた.先が緩んで床に落ちたと思っていたが,数日後,上顎左側臼歯部の違和感および腫脹感を自覚したため,かかりつけ歯科医を受診し紹介により当院を受診した.デンタルX線写真において,上顎左側第二大臼歯遠心に歯軸に沿うように細い金属様不透過像が認められた.摘出された異物は基部で破折したワイヤーであり,歯周ポケット内で
歯間ブラシ
が破折し,ワイヤー部が残存したものと推察された.口腔の健康の保持増進のため,歯間部の清掃効果を高める歯間部清掃用器具の併用が勧められており,特に
歯間ブラシ
の使用割合は近年増加傾向にある.高齢化が進む中,高齢者が
歯間ブラシ
を使用する頻度は今後も高まるものと思われる.一方,
歯間ブラシ
は,患者自身が頻繁に屈曲して使用するため,ワイヤー部で破折しやすいことが指摘されている.破折した
歯間ブラシ
が上顎洞内に迷入し,上顎洞異物の診断にて全身麻酔下で摘出された例も報告されている.かかりつけ歯科医および歯科衛生士は,歯科ブラシのワイヤー部が破折して口腔内に残存する可能性があることを認識するとともに,患者が実際に行っている
歯間ブラシ
を用いた清掃方法を定期的に確認して,正しい使用方法を繰り返し指導する必要があると思われる.
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