一般に成人が水痘に罹患すると, 発疹数が多く, 高熱, 咽頭痛を伴い, 小児よりも重症化することが知られている.我々は, 軽い経過をとった高齢の水痘患者を2例経験した.症例は, 83歳の男性と90歳の女性であり, 高熱はなく, 発疹数も少なく, 合併症もなく順調に治癒した.この2症例は, 臨床的に軽症であったぼかりでなく, 発症の約2週間前に家族内で水痘患者が発生しており, 臨床的に水痘の初感染は考えにくかった.さらに, 抗体検査では抗水痘一帯状庖疹ウイルス (VZV)-IgM抗体が低値であり, 水痘初感染時には軽度の上昇しかみられないVZVの可溶性抗原に対するIgG抗体が高値であった.またイムノブロッティング法による分析では水痘ワクチン接種後の自然水痘罹患例や帯状疸疹例の血清の泳動パターンに類似していた.以上より, 両症例は, 過去に水痘に罹患したが, VZVに対する免疫が低下したために, 新たなVZV曝露後不顕性感染に終わらず, 再度水痘を発症したものと判断された.今後, 核家族化や人口の高齢化が進むにつれて, 高齢者再罹患水痘は, 成人初感染水痘とともに, 増加することが予想される.
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