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全文: "氷河湖"
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  • 早乙女 真穂
    日本地理学会発表要旨集
    2018年 2018s 巻 P214
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/27
    会議録・要旨集 フリー
    近年の地球温暖化による氷河縮小に伴い現在の氷河湖は拡大傾向にある.特にヒマラヤ山脈東部地域において,氷河湖は1960年代以降に急速に拡大しており(Ageta et al., 2000),1980年代以降に氷河湖決壊洪水(GLOF)による被害が報告されている(Yamada and Sharma, 1993; Komori et al., 2012).これまでは過去に生じた災害の規模や巨大な氷河湖の分布から,ヒマラヤ山脈東部地域の氷河湖が世界的に注目されてきた.しかしヒマラヤ山脈全域をみると,氷河湖の大きさ,出現時期,拡大速度,決壊の要因,GLOFの被害状況は地域によって異なる.本調査地であるヒマラヤ山脈西部地域のインド北西部のラダック山脈では小規模な氷河湖が分布しており,2003年7月にドムカル谷で発生したGLOFにより水車や橋で被害が出ており(奈良間ほか,2012),2011年7月にはラダック山脈の北側に位置するタリス村でGLOFにより約130の家屋破壊が破壊され,農作物にも被害が生じている(OCHA, 2011).この地域では,氷河湖の規模や拡大速度は小さいが,氷河湖と人々の居住地の距離は非常に近く,土地利用も河川沿いに集中するため,小規模な氷河湖でも大きな被害につながるケースがある(奈良間ほか,2011;Ikeda et al., 2016).本研究では,インド北西部のラダック山脈,アチナータン村において2017年8月4日に生じた氷河湖決壊洪水の詳細を報告する.
  • 風晴 彩雅, 奈良間 千之
    日本地理学会発表要旨集
    2015年 2015s 巻 P026
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/13
    会議録・要旨集 フリー
    1.      はじめに 中央アジアでは近年,小規模氷河湖が数ヶ月のうちに出現・出水し,下流域に甚大な被害を生じる氷河湖決壊洪水(GLOF)が報告されている (Narama et al., 2010; Mergili et al., 2013).このような短期間で出現・出水する氷河湖は短命氷河湖と呼ばれ,リモートセンシングで湖の出現を把握することは極めて難しい.この地域で最近報告されている短命氷河湖がどのような地形にでき,どのくらいの規模の氷河湖が出現するのかは明らかになっておらず,このGLOFタイプの詳細な調査が必要とされている.本研究では,氷河湖と居住地の距離が短く国内で最も人口が集中する天山山脈北部のキルギス・アラトー山脈を研究対象地域とし,氷河湖が出現する可能性がある地形的条件を検討し,この山域のGLOF被害の現状を明らかにすることを試みた.
    2.      研究方法 衛星画像データを用いて,研究地域の最新の氷河湖インベントリを作成した.使用データは2014年8月と9月撮影のLandsat8(OLI/TIRS)で,GISで氷河湖(>0.001km2)のポリゴンデータを作成し,位置情報,面積,標高,氷河湖タイプの属性データを加えた.山脈中央部の3流域で,Corona/KH3/KH4A/KH4B,Hexagon/KH9の衛星写真,旧ソ連撮影の空中写真,Landsat7/ETM+,ALOS/PRISM AVNIR-2を用いて,1960年代から現在までの氷河湖の面積変化を調べた.短命氷河湖ができる湖盆地形の抽出には,ALOSとASTERのDEMを使用した.氷河湖を氷河接触タイプと非接触タイプの二つに分け,水のたまる湖盆かどうかを検討した.現地調査では,湖盆地形のGPS測量,湖盆図作成,地形観察,過去のGLOF跡調査,聞き取りをおこなった.
    3.      結果 キルギス・アラトー山脈では2014年の時点で,267個の氷河湖(>0.001km2)が確認された.面積変動解析の結果,中央部の3つの流域の氷河湖の3割が,拡大と出水を繰り返す氷河湖タイプであることがわかった.過去に繰り返し出水したいくつかの氷河湖は数年~数ヶ月で出水した短命氷河湖であった.短命氷河湖ができる氷河湖は,湖盆地形に突然水がたまることから,DEMを用いて氷河前面の湖盆地形の抽出をおこなったところ,0.01km2以上の湖盆地形が45個確認できた.過去に大規模出水した氷河湖跡は,これらの抽出した湖盆地形に含まれていた.
    4.      考察 湖盆地形に水がたまるかどうかの検討をおこなった.氷河の融氷水が直接湖盆へ流入する氷河接触タイプの湖盆地形は今後水がたまり短命氷河湖ができる可能性が高い.一方,氷河と離れた位置にある非接触タイプの湖盆地形に水がたまる条件として,1)上流側に表面水流があり水の供給があること,2)埋没氷のデブリ帯が下流側にあり,下流への氷河湖からの表面流出が見られないこと,3) 小さな池がある場合は季節変化があること,の3つが挙げられる.また,湖盆地形の形成は,氷河の急激な縮小により,氷河末端に凹地の空間ができるためである.その凹地のできる時代によって氷河接触タイプか非接触タイプにわかれる.45個のうち,水がたまる条件を持つ湖盆地形は34個あり,これらは山脈北面地域のほとんどの谷に分布していた.今後これまでGLOF被害が報告されていなかった谷でも,短命氷河湖による出水により,山地内の谷底や沖積錐周辺や川沿いで洪水被害が起こる可能性がある.
  • 奈良間 千之, 田殿 武雄, 山本 美奈子, 浮田 甚郎
    日本地理学会発表要旨集
    2013年 2013s 巻 505
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/04
    会議録・要旨集 フリー
    1 はじめに近年のアジア山岳地域の氷河変動は,多時期の数値標高モデルや高度計を搭載したICESatの標高データなどから地域的な質量収支変動の差異が明らかになりつつある.東ヒマラヤでは氷河表面低下量が多い一方,カラコルムでは正の質量収支が報告されるなど,近年の氷河の質量収支や末端変動は一様ではない.中央アジアの天山山脈においては,多時期の衛星データにより広域の氷河の面積変動が明らかになっている.その変動は地域によって大きく異なり,年降水量が多く山脈高度が低い天山山脈外縁部で縮小量が大きい.このような近年の氷河縮小に伴いヒマラヤや中央アジア山岳地域では,氷河前面に氷河からの融け水が溜まった氷河湖が多数出現している.氷河変動にも地域的な差異があるように,氷河湖分布にも地域的な違いがみられる.本研究では中央アジアの天山山脈における氷河湖の分布と氷河湖決壊洪水の特徴について報告する.2 方法2007~2010年に撮影されたALOS/AVNIR-2の衛星データを用いて,天山山脈全域の氷河前面にある0.001km2以上の氷河湖を対象に,ArcGIS上でマニュアルによるデジタイジングで氷河湖のポリゴンデータを作成した.氷河湖ポリゴンのシェープファイルの属性データには,撮影日,使用した衛星画像,流域名,面積,高度,氷河湖タイプ,氷河湖ID,修正日などの基本情報を加えた氷河台帳を作成した.使用した衛星画像の位置精度の検証には,Global Positioning System(GPS)レシーバーであるProMark3とLeica GPS900の高精度GPSを用いて,山岳地域の氷河湖周辺などを歩いて位置情報を取得し,比較した.また,Hexagon KH-9やLandsat7/ETM+の衛星データを用いて氷河湖の発達履歴を明らかにした.30を超える氷河湖で現地調査や湖盆図測量をおこない氷河湖体積を算出した.さらに,過去に決壊した氷河湖の現地調査や被害の特徴をまとめた.3 結果と考察天山山脈全域では,1600ほどの氷河湖(0.001km2以上)を確認した.その分布は,氷河の縮小量が大きい天山山脈外縁部で顕著な発達を示す.特に氷河湖数の多い地域は,氷河縮小が大きいプスケム地域でなく,いくつかの岩屑被覆氷河が分布するイリ・クンゴイ地域やテスケイ地域であった.一方,年降水量の少ない乾燥した天山山脈内陸部のアトバシ地域とフェルガナ地域では,氷河湖数はわずかであった.天山山脈の氷河湖のサイズ分布は,巨大な氷河湖が分布する東ヒマラヤ(ネパール東部やブータン)に比べるとかなり小さい.0.001~0.005km2のサイズが全体の7割を占める.東ヒマラヤの岩屑被覆氷河から発達する巨大な氷河湖の形成過程や平坦な地形場と違い,天山山脈では,平衡線が山脈の稜線付近にかかる小規模な山岳氷河が形成するモレーンの規模は小さく,稜線付近の急傾斜な山岳斜面の地形場は巨大な氷河湖を生み出す空間がない.さらに,氷河湖を堰き止めるモレーンは,小氷期後半~1900年代前半に形成されたため,多量のデッドアイスを含んでおり,多数の小規模なサーモカルスト湖が発達している.1970年代に撮影されたHexagon KH-9と2007~2010年のALOSの衛星データから取得した氷河湖数を比較したところ,ほぼ同数であったが1970年代から継続して存在する氷河湖は半分もなく,現存する氷河湖の多くは1980年代以降に出現したものであった.この地域では,1950~1970年代に氷河湖決壊洪水が多発したが,2000年代に入り小規模な氷河湖決壊洪水が再び報告されはじめた.これは1980年代以降に出現した次世代の氷河湖の発達によるものだと考えられる.また,数か月間~1年ほどで急激に発達して決壊する短命氷河湖も確認した.天山山脈の氷河湖と居住地の距離は十数㎞ほどで,洪水は急勾配の谷を流れるため土石流となるケースが多く,その被害は山麓の扇状地や河川沿いに限定される.2008年7月の氷河湖決壊洪水では,川沿いで被災した人々は過去の氷河湖決壊洪水を知らない新しい移住者であった.発生誘因(自然現象)である氷河湖の決壊をコントロールすることは難しいが,川沿いで暮らす人々の自然災害の知識の改善や情報公開を積極的に進める必要がある.
  • 奈良間 千之, 佐藤 隼人, 山本 美奈子
    日本地理学会発表要旨集
    2015年 2015s 巻 313
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/13
    会議録・要旨集 フリー
    1.はじめに
      キルギスタン北東部に位置するテスケイ山脈では2006年~2014年にかけて氷河湖決壊洪水(GLOF)が起こっている.この地域のGLOFは数か月~数年内に出現・急拡大し,出水する短命氷河湖タイプであり,衛星画像によるモニタリングで氷河湖の出現を把握するのが極めて難しい.2008年7月の西ズンダンGLOFでは,0.04km2の氷河湖がわずか2か月半で出現し,この氷河湖からの出水により,3人が亡くなり,下流の道路や家畜への甚大な被害がでた(Narama et al., 2010).また,同山脈では2013年8月にジェル・ウイ氷河湖,2014年7月にカラ・テケ氷河湖が2年連続で出水し,下流のジェル・ウイ村で被害が出ている.この出水した2つの氷河湖はキルギスタン緊急対策省のハザードレベルでそれぞれ低・未認定となっており(MES, 2013),ハザードレベルの評価が正しくおこなわれておらず,氷河湖への理解が十分であるとは言い難い.そこで本研究では,現地調査や衛星画像解析からテスケイ山脈北側斜面に分布する氷河湖の出水と被害の特徴を明らかにすることを目的とする.
    2.研究方法
      衛星画像(Landsat7/ETM+,ALOS/ PRISM AVNIR-2,Landsat8/OLI)を用いて氷河湖ポリゴンを作成し,氷河湖の分布を調べた.ALOS/PRISMとASTERのDEMによる地形解析から湖盆地形を抽出し,下流域の地形,侵食域と合わせリスク評価をおこなった.現地調査では高精度GPSによる氷河湖周辺の測量,地形観察,出水トンネル確認,堆積物調査を実施した.また,2つのGLOFとその被害の詳細を知るために地元住民から聞き取り調査を実施した.調査結果をまとめ最近のGLOFの堆積物,洪水タイプ,被害を比較し,この地域のGLOFの特徴について考察した.
    3.結果と考察
      衛星画像を用いた氷河湖の変動解析と現地調査の結果, 2013年8月15日に出水したジェル・ウイ氷河湖は約3か月間で面積0.031km2まで拡大・出水した.2014年7月17日に出水したカラ・テケ氷河湖は前年にわずか0.002km2の水たまりが3か月程度で0.024km2まで拡大・出水した.いずれも急拡大して出水した短命氷河湖であった.氷河前面には埋没氷を含むデブリ帯が広がっており,デブリ帯内部に発達したアイストンネルからの出水であった.2つのGLOFは土石流であるが,流れのタイプや堆積構造は大きく異なる.ジェル・ウイ氷河湖のGLOFは粘性が高く土砂を多く含んだ流れで,その堆積物は小さい粒径の岩屑を多く含むマトリックスサポートで無層理の堆積構造であった.一方,カラ・テケ氷河湖のGLOFは水分を多く含む粘性の低い流れで,堆積物は巨礫からなるクラストサポートで,無淘汰・無層理の堆積構造であった.聞き取り調査からも高密流の堆積構造をもつジェル・ウイ氷河湖のGLOFの方が遅い流れであったという証言が得られている.また,両者の下流域の地形の違いにより被害の程度に違いがみられた.ジェル・ウイ氷河湖のGLOFの場合,谷出口が扇状地であったため首振り運動による河道変化が発生し,扇状地上の農地,道路,灌漑用水路,橋などが広範囲で被害を受けた.一方,カラ・テケ氷河湖のGLOFの場合,谷出口は河谷地形であったため,GLOFは河道沿いに流れ,被害は川沿いの2つの橋にとどまった.
      この地域で過去に生じたGLOFの洪水タイプと侵食長を指標として,現存する,今後出現する可能性を持つ氷河湖に対して,下流域の侵食長を計測し,各谷でGLOFが発生した場合のGLOFの洪水タイプを推定した結果,この地域ではMud floodタイプになる可能性の谷が少なくとも8つあることを確認した.
  • 奈良間 千之, 風晴 彩雅, 山本 美菜子, 浮田 甚郎, 池田 菜穂, 田殿 武雄
    日本地理学会発表要旨集
    2014年 2014s 巻 P015
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/31
    会議録・要旨集 フリー
    1 はじめに
     調査地域である中央アジアの天山山脈やインド北西部のラダーク山脈(インド・ヒマラヤ西部)には,小規模な氷河湖が多数分布する.これまでの我々の調査結果によると,天山山脈北部地域に分布する781の氷河湖のうち約80%が1980年代以降に出現した新しい氷河湖であった.天山山脈では,1963年に多くの犠牲者がでた氷河湖決壊洪水(GLOF)をはじめ,多数のGLOFが1950~1970年代に起きた.最近では1998~2012年に再び犠牲者をともなうGLOFが1998年7月にギッサール・アライ地域(5万m3,犠牲者多数),2002年8月にパミール(10万m3,犠牲者24人),天山山脈北部地域(45万m3,犠牲者3人)の3回生じている.一方,ブータン・ヒマラヤにおいては,2000~2010年に急速に拡大した氷河湖は全体のわずか1~3%であった.東ヒマラヤでは1994年以降犠牲者をともなうGLOFは生じておらず,氷河湖の脅威は以前よりも減少している.東ヒマラヤではGLOFの脅威が減少する一方,天山山脈では1980年代以降に出現・発達した次世代の氷河湖が2000年以降再びGLOFを起こしはじめているのである.もう一つの対象地域であるインド北西部のラダーク山脈(インド・ヒマラヤ西部)では,天山山脈と同様に小規模な氷河湖が多数分布する.2010年,2011年,2012年と立て続けにGLOFが生じ,その特徴は両地域で多くの類似点を持つ.このような状況を鑑み,本研究では,小規模氷河湖分布地域である二つの山岳地域を対象に,氷河湖の現状分析と氷河湖決壊洪水の被害状況とその推定をおこない,氷河災害軽減に向けての対策を提案することを目的とする.

    2 方法
     氷河災害の軽減に向けて,本発表では以下の2点について報告する.(1)発生誘因である小規模氷河湖の基礎的な知識の獲得,(2)過去の洪水履歴からの災害実績図.天山山脈とインド・ヒマラヤ西部のラダーク山脈では,世界的にも報告例の少ない短命氷河湖が複数確認されている.短命氷河湖とは,1年~数か月の短期間で出現・決壊する氷河湖を指す.天山山脈のテスケイ山脈では2008年7月にわずか2か月半で氷河湖が出現・決壊して,45万m3の水を流出し,3人の犠牲者をだした短命氷河湖のGLOFが生じた.2012年7月には,同地域のキルギス山脈で1年前に出現した氷河湖(6万m3)が決壊し,首都ビシュケクを含む上流の村々の住民は突然の洪水に混乱した.インド北西部のラダーク山脈では2011年に出現した氷河湖が2012年7月に決壊し2つの橋を流出した.この短命氷河湖の現状を把握するため,空中写真,Corona,Landsat TM/ETM+など複数の衛星データを用いてモニタリングをおこなった.

    3 結果と考察(1)氷河の現状と小規模氷河湖の基礎的な知識の獲得
     キルギス山脈において,ALOS AVNIR-2/PRISM画像を用いて氷河湖分布を調べたところ,229の氷河湖(0.001㎞2以上)の氷河湖を確認した.その中でも比較的大きな氷河湖は山脈西側の北斜面に集中している.衛星画像を用いた面積の変動を調べた結果,短命・繰り返し型と変動型(拡大・縮小)の二つのタイプが存在していた.短命・繰り返し型の氷河湖タイプが3割近くを占めていることがわかった.さらに,過去の氷河湖決壊洪水の記録をみると,短命氷河湖タイプの出水が多いことが明らかになった.詳細は学会において報告する.
  • 奈良間 千之, ダイウロフ ミルラン, 山之口 勤, 田殿 武雄
    日本地理学会発表要旨集
    2018年 2018s 巻 424
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/27
    会議録・要旨集 フリー
    1.はじめに
     キルギスタン北東部に位置するイシク・クル湖流域では,2006年~2014年にかけて4回の氷河湖からの大規模出水が生じた.これら出水した氷河湖は,数か月~1年の間に出現・出水する短命氷河湖と呼ばれるタイプである.2008年7月には,西ズンダン氷河湖がわずか2か月半で出現・出水し,この出水による洪水で3名の犠牲者や家畜の被害がでた(Narama et al., 2010a).2013年8月にはジェル・ウイ氷河湖,2014年7月にはカラ・テケ氷河湖で出水が生じ,灌漑用水路や農地が破壊された(Narama et al., 2018).短命氷河湖の出水は,ネパール東部の氷河湖決壊洪水にみられるようなモレーンが決壊するタイプでなく(Yamada, 1998),氷河前面のデブリ地形内部に発達するアイストンネルの閉鎖によって,凹地に一時的に融氷水が貯水され,トンネルの開放によって出水するタイプである.この出水路の開閉は,氷河湖の面積変動に大きく影響するが,その実態はよくわかってない.そこで本研究では,衛星画像解析から2013年~2016年の氷河湖の面積変動を調べ,その変動特性と地形環境について検討した.
    2.地域概要
     キルギスタン北東部に位置するイシク・クル湖流域は,北岸沿いにクンゴイ山脈,南岸沿いにテスケイ山脈が東西に連なる.クンゴイ山脈南側のチョルポン・アタ測候所(1645mm)の年降水量は307㎜,年平均気温は8.1℃で,テスケイ山脈北側のチョング・クズルスウ測候所(3614m)の年降水量は594㎜,年平均気温は0.2℃である.クンゴイ山脈とテスケイ山脈における1970年~2000年の氷河面積は,8~12%減少している(Narama et al., 2010b).
    3.研究手法
     2013年~2016年の6月~10月に取得された128枚の衛星画像(Landsat8/OLI)を用いて,339コの氷河湖(>0.0005 km2)の各年の季節変動から,stable(停滞),increasing(拡大),decreasing(縮小),appearing(出現),vanishing(消失),short-lived(短命氷河湖)の6タイプに分類した.面積変動の要因を検討するため,氷河前面のデブリ地形から,ALOS-2/PALSAR-2の差分干渉SAR(DInSAR)解析により,内部に氷を持つデブリ地形を抽出した.さらにUAVによる空撮画像から作成したDSMや空中写真のDSMを用いて,短命氷河湖が出現する地形場について検討した.
    4.結果
     2013年~2016年の衛星画像解析から339コの氷河湖を6つのタイプに分類した結果,appearing,vanishing,short-livedの3つのタイプの湖を多く確認した.氷河前面のデブリ地形はテスケイ山脈で930コ,クンゴイ山脈で180コあり,そのうちDInSAR解析によって選別された埋没氷を含むデブリ地形はテスケイ山脈で413コ,クンゴイ山脈で71コであった.1971年~2010年にかけて出現した凹地はテスケイ山脈で196コ,クンゴイ山脈で22コあり,最近の氷河縮小で氷河湖が出現できる多くの凹地が形成された.
    5.考察
     ヒマラヤ東部地域ではincreasingやdecreasingが主要な氷河湖変動であり(Nagai et al., 2017),これらは気候環境や氷河縮小に大きく影響している.一方,研究地域で多く確認されたappearing,vanishing,short-livedのタイプは,単純な氷河縮小によるものではない.これらは,氷河前面に発達する埋没氷を含むデブリ地形とアイストンネルの発達,凹地の存在,凹地からの表面流路がないこと,凹地への氷河からの融氷水の供給があること,さらにはアイストンネルの開閉という地域的な地形環境が特異な変動を引き起こし,短命氷河湖のような大規模出水による洪水が生じていると考えられる.
  • 山本 哲司, 磯部 邦昭, 杉村 俊郎
    写真測量とリモートセンシング
    2001年 40 巻 4 号 45-47
    発行日: 2001/09/04
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
  • 永井 裕人, 田殿 武雄
    雪氷研究大会講演要旨集
    2015年 2015 巻 A1-9
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/02/29
    会議録・要旨集 フリー
  • 森 義孝, 奈良間 千之, ダイウロフ ミルラン, 高玉 秀之
    日本地理学会発表要旨集
    2018年 2018s 巻 P211
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/27
    会議録・要旨集 フリー
    天山山脈北部地域では,「短命氷河湖」と呼ばれるわずか1年から数ヶ月で出現・出水する氷河湖からの洪水被害が報告されている(Narama et al, 2010).氷河湖からの出水は,氷河前面の氷を含むデブリ帯に発達したアイストンネルを通って生じるが,アイストンネルの発達過程,位置,規模,開放・閉鎖などの実態はほとんど明らかでない.そこで本研究では,短命氷河湖を出現・出水させるアイストンネルの位置や大きさを把握するため,天山山脈北部地域において,アイストンネルが確認できる場所でGPR (Ground Penetrating Radar)測定を実施した.
  • 陳 文波
    日本リモートセンシング学会誌
    2015年 35 巻 3 号 191
    発行日: 2015/07/03
    公開日: 2016/02/04
    ジャーナル フリー
  • 奈良間 千之, 森田 玲良
    日本地理学会発表要旨集
    2014年 2014s 巻 606
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/31
    会議録・要旨集 フリー
    1. はじめに
     近年,アジアの山岳地域において,巨大な氷河湖を持たない岩屑被覆氷河(D型氷河)の突発かつ大規模な出水が報告されている.2008年5~7月に出水したカラコルム山脈のグルキン氷河では,カラコルムハイウェイを通行止めにするほど大きなものであった(Richardson et al., 2009).2009年4月に出水したブータン・ヒマラヤのチョゾ氷河では,50万m3の出水があったと報告されており,氷河上湖が出水と同時に消滅している(小森・ツェリン, 2010).これら出水量は大規模なため,氷河湖決壊洪水の一つとして認識されている.これら出水量は,氷河上湖の水量以上であることが確認されているため,岩屑被覆氷河の氷河内部あるいは底部の水路に貯まった水が出水したと考えられる.これら氷河内部・底部の貯水の発達状況は衛星画像からモニタリングできない.キルギスタンと中国の国境付近に位置する天山山脈の南イニルチェック氷河では,メルツバッハ氷河湖が毎年夏に出水することが報告されており,この出水前後の南イニルチェック氷河の現象をつかめば,岩屑被覆氷河の出水の前兆現象を明らかにできる可能性がある.そこで,本研究では,衛星データを用いて岩屑被覆氷河上に発達する氷河湖群の経年変化を捉え,出水前後の出水現象を明らかにすることを目的とする.

     2.地域概要と研究方法
     研究地域は,キルギスタン東部の国境付近に位置する南イニルチェック氷河とその周辺の山岳地域である.特に,南北イニルチェック氷河の間に存在するメルツバッハ氷河湖は,1930年以降初夏~秋にかけてほぼ毎年出水が観測されている特徴的な氷河湖である.1998年~2011年に撮影された衛星画像Landsat,ASTER,ALOS PRISM/AVNIR-2を用いて,南イニルチェック氷河のメルツバッハ氷河湖およびその周辺の8つの岩屑被覆氷河の氷河上湖のデータを取得した.また,ブータン・ヒマラヤのチョゾ氷河の出水前の氷河上の氷河湖の変動も捉えた.また,2013年8月に南イニルチェック氷河の現地調査をおこない,岩屑被覆氷河上に分布する氷河湖とその変動を確認した.

    3,結果と考察
     1998~2011年にかけて,メルツバッハ氷河湖の出水後に南イニルチェック氷河の氷河上湖数が減少していることが確認された.季節変化をみると,南イニルチェック氷河の氷河上湖は,メルツバッハ氷河湖の変動と同期していた.さらに1998~2011年の長期的な変動も同様の傾向を示した.この結果は,南イニルチェック氷河の氷河内・氷河底には氷河内水路が発達していることを示唆する.すなわち,一見独立していると思われる氷河湖が,同じ排水システムで出水するのである.特に南イニルチェックの北側領域では,メルツバッハ氷河湖の水が流出水路だと考えられる. 同様に周辺の岩屑被覆氷河における経年変化をみると,8つ全てが初夏~秋にかけて氷河上湖の変動が確認された.この減少傾向には地域差がみられるものの,7~8割の氷河湖が一斉に消失しているという特徴がある.このような結果から,メルツバッハ氷河湖やチョゾ氷河の出水は,岩屑被覆氷河の氷河内水路の開放の過程であり,岩屑被覆氷河では普通にみられる現象であることが氷河上湖の変動から確認された.ヒマラヤ地域では,多くの岩屑被覆氷河で巨大な氷河湖が発達するが,これは末端モレーンの存在が大きく関係していると考えられ,末端モレーンがない堰き止めるものがない岩屑被覆氷河湖ではそのまま出水し,氷河上では出現と消滅を繰り返していると考えられる.
  • 山田 知充
    雪氷
    2000年 62 巻 2 号 137-147
    発行日: 2000/03/15
    公開日: 2009/09/04
    ジャーナル フリー
    地球温暖化の影響でネパール王国は, 1960年代以降少なくとも14回, 3年に一度以上の頻度で氷河湖決壊洪水 (Glacier Lake Outburst Flood, 略称GLOF) に襲われている.氷河湖は岩屑に覆われた氷河の末端に形成されて, モレーンで堰き止められている.モレーンは小氷期にできた不安定な堆積物である.容易に決壊し, 数百万m3から数千万m3の湖水が数時間のうちに一気に溢れ出すためGLOFは鋭い洪水波形をもつ.インフラや村落の生活基盤の破壊, 人命や家畜の損失に加えて, 斜面崩壊, 森林破壊, 河床への膨大な堆砂など, ヒマラヤの自然にも深刻な損傷を与える.多量の土砂を含むため土石流の様相を呈し, 破壊力が大きい.現在拡大を続けているネパールの氷河湖は1950~1960年頃に誕生した.その後急激に成長し, 長さ1~3km, 幅500m, 深さ80~130m, 貯水量3000~8000万m3もの大きさに拡大を遂げ, 今後のGLOF発生の危険は極めて高い。本総説では氷河湖を持つ氷河の特徴と氷河湖の分布, 氷河湖決壊洪水の実態, その急激な成長過程を紹介し, 今後に残された課題を述べる.
  • 岩田 修二
    地学雑誌
    2002年 111 巻 4 号 Plate1-Plate2
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
  • 小森 次郎
    地学雑誌
    2006年 115 巻 4 号 531-535
    発行日: 2006/08/25
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
    Records of recent changes in growing ice-contact lakes in the Bhutan-China border region are investigated using satellite imagery. The results show that lake growth has continued at a growth rate of< 70 m/year in length and < 0.04 km2/year in area. In the debris-covered area of the glacier, the lake expands in stages through the initial appearance of supraglacial lakes and subsequent expansion of a coalesced lake. In the small debris-free or partially debris-covered glacier, the lake expands simply from a single lake. The initial year of appearance of most of the lakes at the southern and northern sides of the Himalayan mountains ranges from the 1950s to the 1970s and before the 1950s, respectively. Furthermore, the trace of the glacial lake outburst flood (GLOF) in the Hinku valley, and the present situation of the glaciers and the glacial lakes in the Hongu valley in eastern Nepal are confirmed by the field survey. Many boulders and coarse sands generated from the GLOF in 1998 remain distinctly and continuously at least 10 km downstream from the collapsed lake as a bare river bed with thick debris flow deposit. The assessment considered that there are no serious conditions regarding the GLOF given the present situation of both valleys. Comparison with previous data shows that the retreat speed of glaciers at the headwater of the Hongu valley is approximately 8 m/year.
  • 榊原 保志, 山下 さくら, 喜多 雅一
    理科教育学研究
    2020年 61 巻 1 号 119-127
    発行日: 2020/07/31
    公開日: 2020/07/31
    ジャーナル フリー

    ヒマラヤ山脈地域では氷河湖決壊洪水がたびたび発生する。防災教育の一環としてネパールの中等学校で氷河湖決壊洪水の仕組みを学習する授業を行った。教材の開発の方針は,簡単な構造で現象の仕組みを理解しやすいもの,現地で入手できる素材で製作できることなどとした。氷河湖モデルはペットボトルの側面を切り抜いたものである。子どもが記述式の回答に慣れていないことから,授業評価は子どもが答えやすい選択肢による質問肢法とした。氷河湖決壊洪水がネパール東部で発生しているので,授業対象校はネパール東部の中等学校の3校とした。これらの学校には青年海外協力隊として日本人現職教員が勤務し協力が得られやすい利点があった。生徒の生活環境や理解度の実態が十分把握できていないので,学習指導計画は大雑把なものとした。本時の学習指導の目標は氷河湖決壊洪水に興味を持ち,その仕組みを理解することである。この目標を意識しながら,生徒の発言をよく聞き,授業を行う必要があった。授業では,水をためた氷河湖モデルを斜面に埋め込み,氷河や土砂を見立てた石を落とし,氷河湖の水をせき止めているモレーンに相当する部分を壊し,洪水の流れを観察した。授業後に,質問紙調査を行い,授業の有効性を調べた。その結果,次のことが分かった。1)生徒は学校で教わってはじめて氷河湖決壊洪水について知るようになった。2)本授業を受け生徒は氷河湖決壊洪水の仕組みを理解できたと回答した。3)生徒にとって,今回の授業は楽しい授業であった。その理由として,授業の内容が理解できたことや授業の中で演示実験があったからであった。4)本授業は氷河湖決壊洪水に興味関心を高めるのに有効であった。

  • 小松 哲也, 渡辺 悌二
    日本地理学会発表要旨集
    2013年 2013s 巻 506
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/04
    会議録・要旨集 フリー
    中央アジアの山岳地域であるタジク・パミールでは,2002年8月7日に氷河湖決壊洪水(Glacial lake outburst flood: GLOF)が生じ,それにより1つの村(Dasht村; 37°17′51″N, 71°46′50″E)がほぼ消失した(死亡者は25名).こうした氷河災害は今後も同じように発生する可能性が高いことから,タジク・パミールでは適切な災害アセスメントや災害緩和策をとっていく必要がある.しかし,こうした対策を行うにあたって不可欠と思われる情報(氷河・氷河湖の特徴,氷河災害の記録・特徴,現在までに行われた災害アセスメント研究など)は,現在に至るまでまとめられていない.そこで,本研究では,これらの情報のとりまとめを文献レビューやリモートセンシング資料を用いた氷河災害発生箇所の観察,などを通して行った.以下に,このレビューワークで得られた結果の要点を記す.

    ① タジク・パミールではGBAO(ゴルノバダフシャン自治州)において氷河災害の危険性が高く,それ以外の地域では,むしろマスムーブメントに関係する地形災害の危険性の方が高い.GBAOにおいて想定される氷河災害は,氷河崩落,氷河サージ,GLOFに起因するものである.

    ② GLOFについては,2002年8月に決壊洪水を起こしたタイプの氷河湖(ゲリラ氷河湖と名づけた)への注意が特に必要である.ゲリラ氷河湖は,アジアにおけるGLOF研究の先進地域である東ヒマラヤ(ネパールやブータン)で危険視される氷河湖のタイプとは全く異なっており,次のような特徴をもつ.(1)アイスコア・モレーン上に出現する比較的小さな湖(確認されたケースで,その面積は32,000 m2),(2)排出水路をモレーン表面に持たない, (3)出現-成長-決壊のサイクルがほぼ2年間以内に収まる,(4)一度,完全に排水されても再び出現する.

    ③ タジク・パミールでは,氷河サージやゲリラ氷河湖の早期検出が災害アセスメント上,不可欠となる.そのためにはタジク・パミール全域(特にGBAO)において氷河・氷河湖のモニタリング調査を高頻度で継続的に行っていく必要である.こうしたモニタリング調査に最も適すると考えられるのは,北海道大学と東北大学が共同で開発した超小型地球観測衛星(雷神2)のような低コストの観測衛星を多数打ち上げて,同じ地点を高頻度(例えば1日1回)で観測するといったやり方であろう.
  • −セティ川洪水とマディ川氷河湖決壊洪水の原因−
    伏見 碩二
    雪氷研究大会講演要旨集
    2012年 2012 巻 A3-17
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/24
    会議録・要旨集 フリー
  • 山田 知充
    コンクリート工学
    2010年 48 巻 7 号 7_15
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
  • 小森 次郎
    地学雑誌
    2006年 115 巻 4 号 Plate5-Plate6
    発行日: 2006/08/25
    公開日: 2009/11/12
    ジャーナル フリー
  • 奈良間 千之
    日本地理学会発表要旨集
    2019年 2019s 巻 S603
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/30
    会議録・要旨集 フリー
    本稿では,研究活動の成果を地元の住民や自治体に還元する,あるいは現地と関わりながら研究活動を進める社会連携活動の事例として,中央アジアのキルギス共和国,インドのラダーク地方,長野県白馬村のケースを紹介する.
    1.氷河湖研究からのアプローチ
     キルギス共和国北東部に位置するイシク・クル湖流域では,2006年~2014年にかけて4回の氷河湖からの大規模出水が生じている.これら出水した氷河湖は,数カ月~1年の間に出現・出水する「短命氷河湖」と呼ばれるタイプである(Narama et al., 2018; Daiyrov et al., 2018).2008年7月には,西ズンダン氷河湖がわずか2カ月半で出現・出水し,この出水による洪水で3名の犠牲者がでている(Narama et al., 2010).「短命氷河湖」の出水は,ネパール東部の氷河湖決壊洪水にみられるようなモレーンが決壊するタイプでなく,氷河前面のデブリ地形内部に発達するアイストンネルの閉鎖によって,凹地に一時的に融氷水が貯水され,トンネルの開放によって出水するタイプである.「短命氷河湖」の出水タイプは,インド・ヒマラヤのラダーク山脈でも確認されている(奈良間ほか,2012).これら地域は,河川堤防などのハード面の防災対策は現実的でなく,個人の災害への意識・知識や対応力,さらには村単位の住民グループでの対応力の向上により減災を目指すソフト防災対策が重要である.
     筆者らは,現地住民に調査結果を伝えるアウトリーチ活動を実践するため,住民を対象とする氷河湖ワークショップを,ラダーク地方では2012年5月にドムカル村(Ikeda et al., 2016;池田・奈良間,2018),2014年9月にストック村,2015年7月にギャ村,キルギス共和国では2015年8月にジェル・ウイ村で開催した.これらワークショップには,地域住民のほか,環境NGO,政府の防災関係者が参加し,今後の対策について話し合った.2つの地域では,住民の災害に対する知識や意識が大きく違っており,現地の文化や社会的背景を考慮した防災対策が必要であると感じた.また,キルギス共和国では,2017年より衛星データを用いた「短命氷河湖」の監視と早期に情報を伝達する活動をキルギス緊急対策省と実施している.
    2.氷河・雪渓研究からのアプローチ
     筆者らは,白馬村に位置する白馬大雪渓(以下大雪渓)で落石・雪渓調査,唐松沢雪渓で氷河調査を実施している.大雪渓は,日本三大雪渓の一つで,白馬岳(2932m)に通じる,夏季には毎年1 万人以上の登山者が通過する日本有数の人気登山ルートである.大雪渓は,白馬岳と杓子岳の両岩壁に挟まれているため,岩壁から生産される落石や崩落で登山事故が起きている(小森,2006;苅谷ほか,2008).著者らは,2014年から現地調査を実施して,以下の点を明らかにしている.落石が集中して堆積する場所は決まっており,落石が生産される岩盤の地質の違いで岩盤の侵食形態が異なる.その年の積雪深により岩盤斜面の積雪の融解時期が異なり,落石発生時期も融解時期に対応する.雪渓底部に巨大なアイストンネルが存在しており,晩夏に出現するクレバスの位置はアイストンネルの位置と一致する(畠・奈良間,2017).現地関係者とつながるアプローチとして,2017年6月に白馬村役場,白馬振興公社,白馬館株式会社,山小屋関係者,白馬山案内人組合の関係者を集めた報告会を白馬村で開催した.白馬村の山岳関係者との合意形成の下,2017年と2018年に調査結果に基づいて大雪渓上のベンガラルートが設定された(岳人2017年9月号掲載).
     北アルプスでは現在6つの氷河が認定されているが(福井ほか,2018),白馬村でも氷河の可能性のある多年性雪渓が残されている.白馬村のサポートのもと,2018年夏季に立山カルデラ砂防博物館と白馬山案内人組合と協働で氷河調査を実施した.唐松沢雪渓が氷河と認定されれば観光資源としてだけでなく,環境教育にも利用することができ,白馬村との社会連携活動の進展が期待される.
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