交通社会資本整備の実施にあたっては,その効果を計測・予測して事業の有効性を示すことが求められるが,実際には,効果の存在やその大きさを厳密に立証することは難しい.そのことを踏まえると,現実の意思決定において強い立証を求めることは必ずしも適切とは言えず,どの程度の立証が必要であるかを議論することが重要である.本研究では,まず法律分野における立証責任の基礎理論を整理するとともに,交通社会資本整備における立証責任のあり方についての考え方を示す.次に,現在の交通社会資本整備における事実上の立証責任の状況について文献等を用いて検証する.さらにそれらの結果から,社会資本整備効果の立証責任は社会通念の所在との関係が重要であることを示し,その社会通念の形成についての現状と課題を示す.
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