沖縄県宮古島
池間大橋
東方のさんご礁の浅瀬 (24°55'45"N, 125°15'55") にはタカセガイ (サラサバテイ)
Trochus niloticus の中間育成礁が56個、礁嶺に向かって並べられている。一個の育成礁は枡形2連 (鉄筋コンクリート製, 外測5.1m×2.8m×1.1m, 重量約26トン、一枡の内測は2.1m×2.1m×深さ0.6m) で、底には砂の堆積を防ぐ目的でFRP製格子板を敷き、その上に厚さ7.5cm、目合5cm×5cmのFRP製格子板2枚が重ねられている。育成礁の側面には天端から30cmの位置に排水口があるが、それを閉じておけば水深60cmのタイドプール状態になる。ところが1996年に設置した後、格子板にサンゴが着生、成長し、その除去 (掻き落とし) に多大の労力と経費を要するようになった。そこで東端の2個の育成礁4枡の排水口を閉じたままにしておいたところ、格子板は2-3年後、
Acropora 属を主とする25種のサンゴに覆われた。内部のサンゴ被覆度は95%にもなり、大きな群体は直径65cm以上にも成長した。写真は2003年11月 (Fig. 3A) と2005年11月 (Fig. 5A) に写したものである。
予期せぬサンゴ群集の出現は、サンゴ育成技術に多くの示唆を与えると考えた私たちは、育成礁内外の環境測定とサンゴ出現種の同定を行い、サンゴが育った要因として、以下の6つの仮説を挙げた。1) 育成礁内にサンゴの幼生、殊に一斉産卵後のそれら、が滞留して、格子板に着生しやすい条件が与えられた。2) 育成礁内は波浪の影響を受けにくいので、サンゴは物理的破壊を免れ、しかも常に新鮮な海水に洗われて、十分な餌料プランクトンが供給された。3) 格子板上の藻類がタカセガイによって食べられ、サンゴ幼生の着生と育成に好ましい環境が維持された。4) 育成礁には大きな魚が入りにくいため、サンゴが生物侵食や食害を受けなかった。5) サンゴは低潮時にも常に水面下にあって、適当な照度を得ていた。6) 格子板には浮泥の堆積が少なく、サンゴは懸濁物を被ったり埋没したりすることがなかった。これらの仮定を検証し、工夫を加えることによって、近い将来、理想的なサンゴ育成礁をつくってサンゴを育て、さんご礁の修復だけでなく、観光産業にも役立てる道を開きたいと考えている。
抄録全体を表示