これまで, 多くの国において, 射出脱出に関する統計的な研究は行われており, その多くは緊急事態の種類, 射出座席の性能, 脱出者の生存率, 傷害程度及び部位に関するものであった. 日本においても同様の研究がなされているものの, 最大の死亡理由は脱出
決心
の遅れであり, 人的要因であることから, 本研究は, 操縦者に関する変数に焦点を当て, 統計的分析を行い, 操縦者要因の脱出成否への影響を調査することを目的とした. そこで方法として, 航空自衛隊における全射出脱出事例の資料から, 飛行経験, 機内の操縦者数等のデータを抽出し, 分析を行った. その結果, 死亡した操縦者の総飛行時間が生還した操縦者より有意に長い一方, 事故機種飛行時間に関して差は見られず, 総飛行時間が射出脱出に関する成否に影響することが観察された. また, 機内の操縦者数が脱出成功率に影響しない事が確認された.
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