本研究は,小学校の表現運動の実践における1人の優れた指導者の成長の転機に着目し,未熟練者だった時期からどのように指導者としての資質を向上させていったのかを,対象者本人や関係者へのインタビューと対象者が作成に関わった指導資料の分析を通して明らかにし,ダンス指導者の資質の向上に向けた指針を得ることを目的とした。その結果,表現運動の指導者に求められる資質を,以下の「指導の基本的な考え方」「子ども観」「実践の仕方」の3 点からまとめた。
《指導の基本的な考え方》〇 子どもがどんな動きを面白がって表現するかという「子どもと表現のより良い関係」を常にとらえる。 〇子どもの表現を単なるもの真似で終わらせないよう,取り上げた題材の動きの特徴を,指導者自身が身体の動きで具体的に捉え,自身の動きを交えながら指導する。〇同じ動きが続かずいろいろな動きが出てくるように(多様化),動きに差がつくように(極限化),言葉がけによって子どもの動きを面白い方へ向かわせる。
《子ども観》 〇子どもは表現がいいものだと実感したときに,自ら変わっていく存在である。 〇子どもが教えた動きしかできないのではいけない。子どもが自ら動き出すことを大切にする。
《実践の仕方》〇「子どもが満足する授業」にこだわって仲間と学び続け,表現の本質を捉えようとする眼を鍛える。 〇新しい指導法や学習スタイルに出会ったときに,自分の実践にその指導法の良いところを柔軟に取り入れる。
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